ラグビーの日本選手権が28日、決勝を迎え、ヤマハ発動機ジュビロがサントリーサンゴリアスを15−3で破り、創部31年目で初優勝を収めた。ヤマハ発動機は立ち上がりにCTBマレ・サウのトライで先制。前半26分にはWTB中園真司のトライでリードを広げる。後半は得点を奪えなかったものの、粘り強い守備でサントリーをノートライに抑えた。
 会社の業績不振もあり、トップリーグの入れ替え戦を経験する低迷期を乗り越えての頂点だ。
「本当に誇らしい。素晴らしい選手たちです」
 選手、監督として過ごした古巣を破っての優勝に清宮克幸監督の目はうれし涙で潤んでいた。

 早稲田大、サントリーを優勝に導いた名将が強化をスタートさせて4年。トレーニングのみならず、全選手が朝、夜とバランスの良い食事をとれるように改善し、フィジカルを徹底して鍛え上げた。

 決勝でも光ったのはFW陣の強さだ。ラインアウトからモールで押し込み、サントリー陣内に侵入。何度もアタックを仕掛け、最後は相手の守備を切り裂いて、マレ・サウが右中間に飛び込む。7−0。ヤマハ発動機が先制した。

 さらに13分、日本代表FBの五郎丸歩が相手の反則でゴールまで約50メートルの距離ながら、PGを選択。「タッチに蹴ろうと思ったが、その位置に行った時に行けると思った」と右足を振り抜いて沈め、3点を追加する。

 その後、3点を返されたものの、24分にはWTB伊東力が相手のパスをインターセプトし、ゴールに迫る。モール、スクラムでプッシュすると、大きく左へ展開。サントリーの必死のタックルも及ばず、中園が左隅へトライを決めた。

 15−3と点差が広がり、ヤマハ発動機ペースで試合を折り返す。サントリーは日本代表CTB松島幸太朗を走らせる展開に持ち込みたいが、相手の低いタックルに阻まれ、なかなか前進できない。

 ヤマハ発動機は後半10分に五郎丸がシンビン(一時的退出)をとられ、数的不利を余儀なくされるも、相手の反撃をゴール前でしのぎ切り、得点を与えない。五郎丸不在の10分間を乗り切ると、最後までブレイクダウンの攻防でサントリーを上回る。

 試合終了間際のマイボールスクラムでも相手を圧倒。たまらず、サントリーがコラブシングの反則を犯し、五郎丸がタッチラインの外に蹴り出してノーサイドを迎えた。

 今季はトップリーグでリーグ戦4位ながら、プレーオフでは1位の神戸製鋼を破り、決勝に進出した。
「1戦1戦、成長を感じられた。トップリーグの(プレーオフ)決勝で負けて、また成長した。伸び盛りのチーム」
 指揮官は初の日本一に輝いたフィフティーンをそう評する。主将のFL三村勇飛丸は「まだ成長できるチーム。トップリーグの優勝もしていない」と次なる目標を見据えた。

 歓喜の瞬間を、次なる歓喜へ。「この1年で終わらせたくない。この後、1年、2年とヤマハラグビーのカルチャーをつくっていく」と清宮監督は宣言した。ジュビロ(歓喜)の名を抱くサックスブルーの軍団が日本ラグビー界の強豪へ名乗りをあげる。

(石田洋之)