日本サッカー協会は12日、都内のJFAハウスで理事会を開き、前アルジェリア代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチ氏が新しい代表監督に就任することを承認した。これを受け、ハリルホジッチ新監督は今夕、自宅のあるフランスを離れて日本に向かっており、13日に来日会見を開く。既に就労ビザも取得済みで、初采配を振るうのは27日のキリンチャレンジカップ、チュニジア代表戦となる。新指揮官と交渉を行い、理事会に推薦した技術委員会の霜田正浩委員長は「異なる2カ国で代表を率いてW杯の代表権を獲得しており、ヨーロッパのビッグクラブで数々の代表選手と仕事をしてきた実績や経験から、非常に自分の仕事に自信を持っている。そして日本の選手のクオリティを非常に高く評価している」と選定理由を明らかにした。
(写真:会見に臨んだ(左から)霜田委員長、原専務理事)
 ハビエル・アギ―レ前監督の解任から37日。2018年ロシアW杯出場を目指し、6月から予選を戦うサムライブルーの新体制が決まった。
 理事会後の会見では霜田委員長が新監督決定までの経緯を説明。新しい指揮官選びの方針は「開幕を目前に控えたJクラブの現職監督を引き抜かない」「外国人監督を招聘する場合は、世界を知り、世界を経験している人物を連れてくる」の2点だった。

 技術委員会では、この条件に合致した候補者をリストアップし、情報収集をスタートした。2月8日から21日までは霜田委員長が海外に渡り、候補に挙げた人物と接触。この中にハリルボジッチ新監督も含まれており、現在の契約状況やサッカー観、代表監督への意欲などをリサーチした。

 アギ―レ前監督は世界での実績、経験とも十分な指揮官だったが、八百長疑惑が沸き上がって解任に至った。協会の原博実専務理事によると、今回は“身辺調査”も協会内部の実施だけでなく、「候補者が挙がってきた段階で外部機関にもチェックしてもらった。海外の機関にも依頼し、チェックした」という。

 これらを踏まえて、技術委員会ではオファーを行う優先順位を決定。そのトップがハリルホジッチ新監督だった。
「決して日本協会の条件が素晴らしかったわけではない。彼はいろんな国の代表監督やビッグクラブのオファーを断って日本代表を選んでくれた」

 交渉役を務めた霜田委員長は、新指揮官に「日本代表の新しいプロジェクトをやってみたい」との思いの強さが合意を勝ち得た要因と語る。そして、「日本人の持っているクオリティやストロングポイントを生かして、世界で戦える武器を増やしてくれるんじゃないか」と大きな期待を寄せた。

 ハリルホジッチ新監督は現在はフランス国籍を保有し、フランス語を話す。出身はボスニア・ヘルツェゴビナで、イビチャ・オシム元代表監督とも親交がある。一部では、選考段階で「オシム元監督の推薦を受けた」と報じられたが、霜田委員長は「具体的に何かを話した事実はない」と否定した。実際には海外での情報収集中、オシム元監督の下を訪ねようとしたが、不幸事があり、キャンセルになってしまったという。霜田氏は訪問の目的について「日本代表を外から見てどうか、サッカーの話を単純にしたかった」と監督人事とは関係がなかったことを強調した。

 新監督を支えるコーチ陣も合わせて承認され、フランス人のジャッキー・ボヌベー氏がコーチに、同じくフランスのシリル・モワンヌ氏がフィジカルコーチに就任する。GKコーチは「日本人のゴールキーパーから高い信頼を得ている」ことから、アギーレ前監督のスタッフだったスペイン人のリカルド・ロペス・フェリペ氏が引き続き務める。

「勝利するためには一切、手を抜かず、やれることはすべてやる。勝利のためには完璧主義者でありたい」
 新監督は霜田委員長に、こう自身のポリシーを述べたそうだ。理事会での承認直後に早速、機上の人となり、来日する新しいリーダーが何を語り、どんなチームづくりをみせるのか。まずは13日の“施政方針演説”に耳を傾けたい。