日本サッカー協会は19日、月末の「キリンチャレンジカップ2015」(対チュニジア代表、27日、大分)と「JALチャレンジカップ2015」(対ウズベキスタン代表、31日、東京)に出場する日本代表31名を発表した。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任後、初の代表招集となる今回は、海外組からFW本田圭佑(ACミラン)、MF香川真司(ドルトムント)らが順当に選出されたほか、MF宇佐美貴史(G大阪)、FW大迫勇也(ケルン)、MF山口蛍(C大阪)などがメンバーに復帰した。また負傷離脱しているDF内田篤人(シャルケ)やDF長友佑都(インテル)も招集された。初代表は俊足のサイドバック・藤春廣輝(G大阪)の1名。代表で歴代最多の152試合出場を誇るMF遠藤保仁(G大阪)は外れた。指揮官の意向により、故障者が出た場合のバックアップメンバー12名も発表され、FW川又堅碁(名古屋)、MF高萩洋次郎(ウェスタン・シドニー)らが名前を連ねた。
(写真:立ち上がり、プロジェクターを使用してメンバーを説明するハリルホジッチ監督)
 就任から6日、早くも新指揮官が独自色を出した。
 まずは代表発表の方法から大幅に変えた。従来はリストが報道陣に配られ、監督が座ってメンバー選考についてコメントするのが通常の流れ。だが、ハリルホジッチ監督は報道陣の前に出て、立ったまま代表選手を自らひとりひとり読み上げていった。しかもプロジェクターまで準備して選手の顔写真と名前を映し出す手の込みようだ。その様子は、これからの代表合宿で行われるであろうミーティングを彷彿とさせるものだった。

 さらに2戦のみの親善試合にかかわらず、選んだのは31名と大人数だ。就任会見で「私の哲学、仕事の仕方を伝えたい」と語っていたように、故障で出場が厳しい選手もあえて呼んだ。さらに「日本代表はすべての選手に開かれている」ことを示すため、バックアップメンバーも公表した。この中にはMF谷口彰悟、DF車屋紳太郎など代表未経験の若手も含まれる。

「発表した選手にはモチベーション高く、準備をして競争が始まることを意識してもらいたい。良いプレーをしていれば呼ぶ。スター選手に代わる選手にも期待しているし、そこが代わっても問題はない」
 そう言い切った新監督の意図がハッキリと見えたのは、長く代表の屋台骨を支えた遠藤をリストから外したことだ。会見では自ら「日本代表に貢献してくれた彼に敬意を表する」と言及。その上で、「私はロシアW杯のための準備をしています」と今後を見据え、世代交代を推し進める考えを明らかにした。

 短期間の作業で選んだ選手たちに、どんなサッカーを浸透させるのか。ハリルホジッチ監督は会見中、「グループ」という用語を何度も口にした。
「日本代表には、皆さんが知っている(リオネル・)メッシや(クリスティアーノ・)ロナウド、(ズラタン・)イブラヒモビッチのような個を持った選手はいない。我々の大きな特徴はコレクティブであること。それはチームであり、グループで戦うということ。そこをトレーニングでは大きくやっていきたい」

「グループ」で戦うにあたり、中盤に関しては「2つの異なるオーガナイズを準備していきたい」と方針を明かす。
「攻撃的な中盤にするのか、守備的な中盤にするのかということ。皆さんは、この2試合でご覧になられると思う。選手には異なるオーガナイズをプレーしてもらうつもりだ。このグループの中で私のやり方を知ってもらいたい」
 2試合続く点を有効活用し、フォーメーションを含め、複数の戦術をテストするプランだ。

 起用する選手も27日のチュニジア戦と、31日のウズベキスタン戦では大幅に変える可能性が高い。ハリルホジッチ監督は「Aチーム、Bチームと分けてはいない」としながらも、「できるだけ多くの選手を使っていきたい」とさまざまなメンバーを試す。

「私が期待したいのは各ポジションで競争があること。私のやり方では前もって決まったベストメンバーはいません」
 日本に来て初めての代表選考を終え、指揮官はメンバーリストの用紙を手にしながら、語気を強めた。合宿、試合を含め、今回の代表での活動は9日間。「ピッチ内のことだけでなく、ピッチ外の部分に関しても、いろいろ準備している」という新しい指導者のスタイルを、どこまで理解し、実践できるか。選ばれた選手たちには適応力が問われる日々になりそうだ。

 なおチュニジアでは現地時間18日、日本人の死傷者も出た無差別銃撃テロ事件が発生したが、日本協会では犠牲者に哀悼の意を表明した上で、試合は予定通り実施することを明らかにした。

【日本代表メンバー】 ※はバックアップメンバー

GK
川島永嗣(スタンダール・リエージュ)
東口順昭(ガンバ大阪)
西川周作(浦和レッズ)
権田修一(FC東京)
※林彰洋(サガン鳥栖)

DF
酒井高徳(VfBシュツットガルト)
酒井宏樹(ハノーファー96)
内田篤人(FCシャルケ04)
吉田麻也(サウサンプトン)
水本裕貴(サンフレッチェ広島)
昌子源(鹿島アントラーズ)
森重真人(FC東京)
槙野智章(浦和レッズ)
太田宏介(FC東京)
藤春廣輝(ガンバ大阪)
長友佑都(インテル・ミラノ)
※塩谷司(サンフレッチェ広島)
※鈴木大輔(柏レイソル)
※千葉和彦(サンフレッチェ広島)
※車屋紳太郎(川崎フロンターレ)

MF
長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)
柴崎岳(鹿島アントラーズ)
今野泰幸(ガンバ大阪)
青山敏弘(サンフレッチェ広島)
山口蛍(セレッソ大阪)
香川真司(ボルシア・ドルトムント)
清武弘嗣(ハノーファー96)
※谷口彰悟(川崎フロンターレ)
※米本拓司(FC東京)
※大森晃太郎(ガンバ大阪)
※高萩洋次郎(ウェスタン・シドニー)

【FW】
本田圭佑(ACミラン)
永井謙佑(名古屋グランパス)
小林悠(川崎フロンターレ)
岡崎慎司(1.FSVマインツ05)
大迫勇也(1.FCケルン)
興梠慎三(浦和レッズ)
乾貴士(アイントラハト・フランクフルト)
武藤嘉紀(FC東京)
宇佐美貴史(ガンバ大阪)
※柿谷曜一朗(FCバーゼル1893)
※川又堅碁(名古屋グランパス)
※豊田陽平(サガン鳥栖)