21日、東京・駒沢体育館で「ANA CUP 第39回日本ハンドボールリーグプレーオフ」が行われ、準決勝第1試合で琉球コラソン(レギュラーシーズン4位)と大崎電気オーソル(同1位)が対戦した。プレーオフ初出場の琉球は、リーグ戦無敗の大崎電気にリードを奪う場面もあったが、徐々に押し込まれ、逆転を許した。27−31で敗れ、決勝進出はならなかった。準決勝のもう1試合は、4連覇を目指す大同特殊鋼フェニックス(同3位)がトヨタ車体ブレイブキングス(同2位)を26−22で下した。22日に駒沢体育館で開催される決勝は、大崎電気と大同特殊鋼のカードとなった。


 “下剋上”は叶わなかった。日本リーグ唯一のクラブチーム・琉球が臨んだ初のプレーオフ。レギュラーシーズン16戦全勝の大崎電気に跳ね返された。

 先制したのは大崎電気。植垣健人、小澤広大の連続得点で、琉球は2点のリードを奪われた。幸先の悪いスタートだったが、琉球はリズムを掴み始めると、速いパス回しで反撃を仕掛ける。敵陣でファウルを誘うなど、攻める時間が増え始めた。

 反撃を狼煙を上げたのは、やはりこの男だった。今シーズンの得点王・棚原良が、前半3分40秒にゴールネットを揺らし、1点を返した。エースの一撃で勢いに乗った琉球は、2−4と再び2点のビハインドを負ったが、9分44秒からの約2分間で3連続得点で逆転に成功する。この試合、初のリードを奪う。

 ここから両チームの点の取り合いになり、8−9と1点のビハインドとなった琉球。19分53秒、7メートルスローのチャンスを得ると、棚原が着実にゴールを決める。エースの得点で再び勢いづく琉球は、GK内田武志が大崎電気の宮崎大輔のシュートを身を挺して、ゴールを守った。攻めては20分55秒に水野裕紀が、20分55秒には名嘉真吾と得点を重ねて2点のリードした。

 しかし、徐々に攻撃のミスが目立ち始めると、流れが傾く。26分21秒、13-11と琉球2点リードの場面で、棚原がゴール前で宮崎を倒し、2分間の一時退場。今シーズンチーム総得点の3割を叩き出したエースがコートを離れると、堪え切れなった。大崎電気に追いつかれ、棚原がコートに戻ってきてからも2失点。前半は13-15で終えた。

 琉球の東長濱秀吉監督は後半開始から、GK内田を石田孝一に代えるなど、悪いムードを断ち切ろうとした。しかし、1分8秒に大崎電気の小室大地にゴールを許すと、元木博樹と小澤に2得点ずつ奪われて、この試合最大の5点差をつけられた。琉球はエース棚原を中心に一時は2点差まで詰め寄るものの、最後まで追いつくことはできなかった。27-31でタイムアップし、初の日本一の挑戦は日本代表選手を揃えるスター軍団の前に散った。

 琉球は棚原が13点と、全得点の半数近くがエースに依るものだった。一方、大崎電気は選手が万遍なく点を獲るなど、攻撃パターンは多彩だった。それが東長濱監督の言う「負ける鉄則」という失点数を招いた。琉球のレギュラーシーズンの1試合は平均得点は26.3で、「25失点以内に抑えて、ロースコアに持ち込みたい」という試合前のゲームプランは果たせなかった。「選手は一生懸命頑張ってくれた」と称えつつも、大崎電気の方が試合巧者。「細かいミスが続き過ぎた」と攻撃でのミスが目立ち、勝負所で踏ん張れなかったのも痛かった。

 敗れはしたものの、日本リーグ参戦7年目にして初のプレーオフ進出はクラブ史上初の快挙だった。実業団チームのように親会社のサポートを受けていないため、資金・環境面で決して恵まれているとはいえない。「スター選手がいなくてもトップリーグでやれるというところを見せたかった」と東長濱監督もトップリーグで戦っていく手応えは掴めたようだ。この経験を生かせるかどうか、来シーズン真価が問われる。琉球の挑戦は、これからも続く。

(文・写真/杉浦泰介)