東都大学野球リーグ1部の立正大学硬式野球部・糸川亮太は、この春、最終学年を迎える。新チームでは副主将を任され、「より一層去年よりも自覚と責任を強く感じています。逃げられないなという気持ちです」と気が引き締まっている。西口文也(元・埼玉西武)、武田勝(元・北海道日本ハム)らプロ野球で活躍したピッチャーを輩出してきた立正大。「R」のキャップを被る糸川もその先輩たちに続き、プロ入りを目指し、日々鍛錬を積んでいる。

 

 

 

 

 

 

 2018年秋は立正大、糸川にとって実りのシーズンだった。立正大は東都1部を18季ぶり、神宮大会を9年ぶりに制した。糸川は先発、リリーフと大車輪の働きを見せたのだ。リーグ戦の優勝決定戦は先発し、8回無失点の好投。神宮大会決勝は試合の締め括りを任され、胴上げ投手になった。

 

 一方で19年は春先にケガした影響で思うようなピッチングをできなかった。

「そこからずっとズルズルいってしまい、全体的に悪かった。良いところがなかったというのが去年の印象です」

 特に春は苦しみ、1勝3敗で防御率5.49だった。2年秋のリーグ戦が2勝1敗、防御率1.98だったことを考えれば、悔いの残るシーズンだったと言えよう。秋は盛り返し、3勝1敗で防御率3.22。3年は春5位、秋4位とチームも下位と振るわなかった。

 

 目標であるプロ入りには、更なる成長、そしてアピールが必要になる。

「現状のことを考えると実力は全然足りていない。この1年間でどれだけ化けられるかが大事になってくると思っています」

 内容はもちろんのこと、成績にこだわる1年になるという。

 

 大学で変貌した投球スタイル

 

 糸川のストレートはMAX145km。特筆すべき速さではない。その分、球種は豊富でスライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップを駆使し、総合力で勝負する。特にシュートして落ちるチェンジアップとシンカーは空振りを奪える変化球だ。ストレートとの緩急を生かし、バッターのタイミングを外す。

 

 何よりも彼は闘志を前面に押し出すピッチングを持ち味とする。そのピッチングスタイルは、糸川本人によれは、立正大に入学してから確立したという。

「大学に来て、レベルの高さを1年生の時、痛感しました。周りと同じように投げていてもうまくいかなかったですし、誰よりも強い気持ちでバッターに向かっていかなければいけないと思いました。“そこだけは絶対に負けたらダメだ”というのが、はじまりです」

 

 立正大OBで糸川を指導する金剛弘樹投手コーチは、彼の投げっぷりの良さ、マウンドの佇まい、打者に向かっていく姿勢を買っている。加えて糸川の長所をこう語る。

「まず先発とリリーフ、どちらでもできることが糸川の強みです。プレッシャーのかかる場面でも動じず、自分のスタイルを変えない。それに三振を狙って取れる。ウイニングショットのチェンジアップとシンカーは分かっていても打たれない」

 ポテンシャルは十二分にある。この1年でどれだけ化けられるかで、目標である「プロ入り」が現実味を帯びてくる。

 

 糸川が野球に触れたのは、7歳上と3歳上の兄がいずれも野球をやっていたからだ。兄の試合について行っては壁当てをしてボール遊びに夢中になっていた。だから糸川が小学1年になり、2人の兄と同じ軟式野球チームの妻鳥ファイターズに入団することは何ら不思議なことではなかった。

 

(第2回につづく)

 

糸川亮太(いとがわ・りょうた)プロフィール>

1998年4月30日、愛媛県四国中央市生まれ。小学1年で野球を始める。妻鳥ファイターズ-川之江ボーイズ-川之江高校-立正大学。川之江高校時代は甲子園出場こそかなわなかったものの、エースとして3年時の春季愛媛県大会優勝、四国大会準優勝に貢献した。立正大進学後は2年秋に頭角を現し、東都大学1部の18季ぶり優勝、神宮大会の9年ぶりの優勝に導いた。冬には侍ジャパン大学代表候補合宿に参加した。MAX145kmのストレート、スライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、シンカーを駆使する。身長172cm、体重76kg。右投げ右打ち。背番号17。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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