(写真:激しいプレッシャーに苦戦したものの、75分プレーした齋藤)

 15日、スーパーラグビー(SR)第3節が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、日本のヒト・コミュニケーションズ サンウルブズがニュージーランドのチーフスに17-43で敗れた。前半7分に先制したサンウルブズだったが、チーフスに4トライを奪われるなど12-24で試合を折り返した。後半は相手が3トライ取ったのに対し、1トライを返すにとどまり、ボーナスポイントも獲得できなかった。

 

 開幕戦で見事なアタックを見せ、オーストラリアのレベルズに噛み付いた狼軍団だったが、SRを2度制覇したニュージーランドの強豪チーフスには歯が立たなかった。

 

(写真:マッケンジーは巧みなステップ、キックのルーティンで観客を沸かせた)

 サンウルブズは開幕戦から1週休みを挟み、今季SR2戦目だ。開幕戦からはスタメンを2人入れ替えて臨んだ。早稲田大学4年のSH齋藤直人は初スタメンだ。一方、2連勝中のチーフスは前節からPRネポ・ラウララ、FLサム・ケイン、CTBアントン・レイナートブラウンらが外れたが、SHブラッド・ウェバー、FBダミアン・マッケンジーらニュージーランド代表(オールブラックス)のキャップホルダーが顔を揃えた。

 

 先制したのはサンウルブズ。7分にSOガース・エイプリルがゴール目前で身体を当て、ひねりながらインゴールにねじ込んだ。エイプリルはコンバージョンキックを成功させ、サンウルブズは7点のリードを得た。

 

 幸先の良いスタートだったが、チーフスのアタックを防ぎ切れない。ウェバー、マッケンジー、SOケイリブ・トラスクなどのパス回しや突破からトライを連続して奪われた。すぐに逆転され、7-24と点差が開いた。

 

(写真:BKも加わったモールからトライが生まれた)

 前半終了間際、サンウルブズが敵陣内で猛攻を掛ける。チーフスは度重なるペナルティーでLOタイラー・アードロンがシンビン(10分間の一時退場)。サンウルブズはラインアウトモールかはHOジャバ・ブレグバゼがインゴールに飛び込んだ。12-24でハーフタイムを迎えた。

 

 12点差で迎えた後半、1人多い約10分間が勝負どころだった。「どれだけボールを持って攻められるか」と大久保直弥HC。速いテンポでのパス回しはサンウルブズの持ち味だ。しかし、チャンスをモノにできなかった。3分、CTB森谷圭介が落球。そのままカウンターを食らい、トライまで許した。「あそこで取りきれなかったら、あのレベルでは勝てないということ」と大久保HCは悔しがった。

 

 点差を縮めるどころか引き離された。特に後半は敵陣に攻め込みながら要所要所でボールを失った。チーフスのウォーレン・ガットランドHCは「大事な場面でターンオーバーできたことが結果に繋がった」と語った。ブレイクダウン(球際の攻防)で劣勢を強いられたことが痛かった。ゲームキャプテンを務めたウェバーはブレイクダウンに対するこだわりを「サンウルブズが早いペースで試合をしてくることはわかっていた。それを封じ込めるため」と話した。

 

(写真:持ち味のボールキャリーを発揮した中野)

 1万8000人を超える観客を前に開幕2連勝はかなわなかったが、明るい材料もあった。初先発の齋藤は後半35分までプレーし、齋藤と同じ早大4年のCTB中野将伍がSR初トライをあげるなど若手の活躍は光った。特に齋藤はチーフスからの激しいプレッシャーに遭いながらも75分間戦い抜いた。大久保HCも「まだまだFWとのコミュニケーションが課題。ただ、それを差し引いても素晴らしかった」と称えた。

 

 トップリーグとスケジュールが重なっているため、選手集めに苦労している印象のあるサンウルブズだが、ジャパンの次代を担うSHとして期待される齋藤が、SRという高いレベルの試合を体感できていることは大きい。本人も「もっともっと試合に出たい」と意欲的だ。「うまくいかない試合を経験できた。これを次に繋げないと意味がない」。チームと共に成長を誓う。

 

  サンウルブズの次節はオーストラリアのレッズと敵地ブリスベンで戦う。2週連続でのアウェイゲームとなるが、一戦一戦が勝負となる。SRのラストシーズン。まだまだ暴れる機会は残されている。

 

(文・写真/杉浦泰介)