JALチャレンジカップ2015が31日、東京スタジアムで行われ、日本代表(FIFAランキング53位)はウズベキスタン代表(同72位)に5−1で勝利した。27日のチュニジア戦からスタメンをすべて入れ替えて臨んだ日本は、立ち上がりにMF青山敏弘のミドルシュートで先制。後半に入ってFW岡崎慎司が2試合連続ゴールで追加点をあげるなど3−0とリードを広げる。その後、1点を返されたものの、終盤には途中出場のFW宇佐美貴史、FW川又堅碁が揃って代表初得点をあげて突き放し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は就任後の2試合を連勝で飾った。

 青山も代表初ゴールの先制弾(東京)
日本代表 5−1 ウズベキスタン代表
【得点】
[日本] 青山敏弘(6分)、岡崎慎司(54分)、柴崎岳(80分)、宇佐美貴史(83分)、川又堅碁(90分)
[ウズベキスタン] トゥフタフジャエフ(82分)
「本当に素晴らしい出発ができた」
 初陣での2連勝にハリルホジッチ監督は満足げな表情をみせた。招集したフィールドプレーヤーは試合に出られる25人全員を2試合で起用。選手の動きを試しつつ、指揮官の施した戦術も見事にハマった。

 この日はチュニジア戦で途中出場したFW岡崎、FW本田圭佑、MF香川真司がスタメン入り。ボランチは今野泰幸と青山の組み合わせで、最終ラインは代表初出場となる昌子源と、森重真人のセンターバックに、サイドは酒井高徳、内田篤人と海外組をミックスさせた。

「積極的にシュートを狙っていけ」
 試合前、アグレッシブさを要求していたハリルホジッチ監督に早速、応えたのが青山だ。立ち上がりの6分、コーナーキックを相手GKがパンチングしたボールに反応。ペナルティエリアの外からボレーシュートを放つ。約20メートルの弾道はゴール右上に突き刺さった。日本があげた5得点の中でハリルホジッチ監督が「一番スペクタクル」と評した29歳の代表初ゴールで日本に先取点が入る。

 その後も相手のボールを奪うと、すぐに前線に運び、乾、本田が立て続けにシュートを放つ。だが、追加点には至らない。相手のセットプレーからゴール前でヘッドで合わされてヒヤリとするシーンも何度か見られ、1−0のまま、前半を折り返す。

 すると、ハリルホジッチ監督はハーフタイムで選手も驚く修正を加える。まずは選手交代だ。今野に代えて本来はセンターバックの水本裕貴を投入。水本自身も「(ボランチは)やったことがない」とビックリする起用だった。しかし、これは指揮官が空中戦対策、そして中央でブロックをつくってサイド攻撃を仕掛けるために思い描いていたオプションだった。

 この采配が機能し、2点目のゴールが生まれる。9分、香川から左サイドの乾で速いパスが通る。クロスは一旦、相手DFに阻まれたが、左サイドバックで後半頭から入った太田宏介が駆け上がって、こぼれ球を受け、もう一度、あげ直す。これにファーサイドで飛び込んだのが岡崎だ。ダイビングヘッドでゴールネットを揺らした。水本の投入でサイドバックが高い位置に上がれるようになった結果、二次攻撃が効果的に決まった得点だった。

 そして、戦術面でも指揮官曰く「ワナを仕掛けた」。水本には指揮官は再三、ポジションを上がり過ぎないように指示。ブロックをあえて引き気味にすることで、相手をおびき寄せ、ボールを奪ってカウンターに転じたのだ。

 19分には自陣で奪ったボールに対し、交代直後の宇佐美が縦パスを入れて攻撃のスイッチをオンにする。岡崎、香川、本田、再び宇佐美と素早いパスがつながり、あっという間に敵陣へ。宇佐美のクロスはゴール前でスライディングした岡崎にわずかに届かなかったものの、相手守備陣を翻弄する。

 35分には相手FKのこぼれ球をチェイスし、マイボールにすると、すぐさまカウンターアタック。相手GKが飛び出してきたのを見逃さず、途中出場のMF柴崎岳がループシュートを放つ。ボールはGKの頭上を越え、バウンドしてゴールへ。これに岡崎が走りこんで詰めたが、自らシュートは放たず、相手DFをブロックして、そのままボールはゴールに吸い込まれた。

 若い柴崎に得点をつけさせようとしたストライカーの配慮を指揮官は「素晴らしい」と何度も繰り返して絶賛。5得点よりも、「これが一番スペクタクルかもしれない。岡崎はチームのために行動してくれた」と喜んだ。

 直後、セットプレーから1点を失ったものの、日本はゴールラッシュに沸く。38分には宇佐美が中央で相手DFをかわし、ペナルティエリアに侵入。右足で流し込み、待望の代表初ゴールを決める。

 さらに終了間際、右コーナーキックのこぼれたボールを森重がつないでキープし、この日、最後にピッチに送りこまれた川又が丸坊主の頭で押しこむ。こちらも代表初ゴール。新戦力が立て続けに結果を出し、ハリルホジッチ監督も笑顔をみせた。

「現状で20人のフィールドプレーヤーと3人のゴールキーパーを選べといわれても難しい、それだけ選手のクオリティは高いことが理解できた」
 30人の大所帯で自身の考えを浸透させ、競争を促した10日間を終え、指揮官は手応えを感じている。前へのスピードを徹底したことで攻撃は活性化し、「このチームはもっと速く、もっと強いチームになる」と確信を得た。

 次に代表が集結するのは6月。いよいよロシアW杯への予選が始まる。試合後、親善試合には珍しく、ハリルホジッチ監督はピッチ上で選手を集め、円陣をつくって語りかけた。
「勇敢さ、大胆さを持て」
「自分に自信を持つこと、コンプレックスを抱くな」

 情熱と戦術を兼ね備えた新しいリーダーの下、ブラジルW杯とアジアカップで停滞気味だった日本サッカーに浮上の兆しが見えた。