4月1日(水)

◇決勝
 エース平沼、全5試合で完投
東海大四(北海道)   1 = 100000000
敦賀気比(福井)     3 = 10000002×
【本塁打】 (敦)松本2ラン
 北陸に紫紺の大旗が初めて渡った。敦賀気比・平沼翔太(3年)、東海大四・大澤志意也(3年)による今大会防御率0点台同士の投げ合い。エース右腕対決を制した敦賀気比が初優勝を手にした。

 雨のため、1時間開始が遅れた決勝戦。初回から試合は動いた。1回表、いきなりピンチを迎えた平沼は4番・小川孝平(3年)に犠牲フライを打たれ、先制を許す。その裏、敦賀気比はヒットと死球で2死一、二塁のチャンスを作ると、山本皓大(3年)のライト前ヒットでランナー1人が還る。準決勝までの4試合ノーヒットのと当たりのなかった5番打者の初ヒットは貴重な同点打となった。

 その後は互いにランナーを出しながらも、平沼と大澤が粘りのピッチングを見せ、得点を入れさせない。スコアボードにはゼロが並ぶ。特に敦賀気比の平沼は東哲平監督が「ものすごく踏ん張ってくれた」と称える力投。6回は2死二、三塁から空振り三振に仕留めると、7回は1死二、三塁のピンチで2者連続で内野ゴロに切って取った。

 しかし、敦賀気比打線も大澤の前にホームベースが遠い。7回裏に四球と盗塁で得点圏にランナーを進めたが、後続が凡退した。すると8回表、平沼は先頭打者にツーベースを打たれ、再びピンチを迎えた。続くバッターの送りバントを処理した平沼は迷わず三塁へ送球する。タイミングは完全にアウトだったが、タッチにいった三塁手のグラブとランナーの足がぶつかり、ボールはこぼれた。敦賀気比にとっては不運なかたちで無死二、三塁という大ピンチを迎える。

 ここで打席には好投を続けている大澤。打率は5割を超える脅威の7番打者だ。カウント0−1からの2球目、東海大四ベンチが動いた。思い切ってスクイズを敢行したが、敦賀気比バッテリーはこれを読んでウエストボール。バットに当てさせなかった。飛び出した三塁ランナーを挟殺し、まず1アウトをとる。大澤を追い込んだ平沼は、インハイに渾身のストレートを投じ、見逃し三振を奪った。

 1人でマウンドを守り続けるエースの力投に今度はバックが応える。8番・立花奏(3年)が平沼の初球を叩き、鋭い打球が一二塁間を襲った。均衡がついに破れるかと思われたが、ファースト上田竜也(3年)が打球に飛びつき、キャッチする。そのまま一塁ベースを自らが踏み、ピンチを凌いだ。ファインプレーが飛び出し、敦賀気比ベンチも沸く。

 8回裏、先頭打者の平沼が四球を選ぶ。エースで4番の平沼は冷静にボールを見極め、後続に託した。続く5番の山本が送りバントを決め、1死二塁。ここで打席には松本哲幣(3年)が入る。前日の準決勝で甲子園史上初となる2打席連続満塁ホームランを放っている前日のヒーローは、「平沼が苦しい中、いいピッチングをしていた。助けたいと思っていた」と、カウント1−0からの甘く入ったファーストストライクを見逃さなかった。打球はレフトポール際に吸い込まれる勝ち越しの2ラン。松本の大会記録に並ぶ3本塁打目は平沼に恵みの2点をもたらした。

 初優勝まで、あとアウト3つ。平沼は先頭バッターにヒットを許したものの、後続を空振り三振に仕留めるなどアウトカウントを重ねていく。最後の打者をピッチャーゴロで仕留めた。今大会5試合をひとりで投げ抜いた右腕は「つらかった」と胸の内を明かした。昨夏は2年生エースとしてベスト4入りに貢献。「先輩から託された全国制覇」をその手で勝ち取って見せた。

「この瞬間を目指してやってきた。最高の気分です」と喜んだ東監督。敦賀気比は北陸勢、福井県初の甲子園制覇を果たし、高校野球の歴史に新たな1ページを刻んだ。これで史上8校目となる春夏連覇への挑戦権を得た。

(文/杉浦泰介)