Jリーグ2020年シーズンの開幕が間近に迫っているなか、活きのいいルーキーを見つけた。“法政のメッシ”と呼ばれたFC東京の22歳、紺野和也である。

 

 2月18日、ホームの東京スタジアムで開催されたACLグループリーグ第2戦、パースグローリー(オーストラリア)戦。0-0で迎えた後半14分に、4-3-3の右ウイングで起用された。法政大時代の昨シーズンに特別指定選手としてJ3デビューを果たしているが、プロ契約を結んでから初めての試合。左利きのアタッカーにとって大きな可能性を示したゲームとなった。

 

 身長は昨季のリーグMVP・仲川輝人(横浜F・マリノス)と同じ161cm。小気味いいドリブルと独特なボールタッチによって、チームに流れを引き寄せていく。

 

 ピッチに入ってすぐの後半16分のプレーは目を引いた。自陣でパスカットするとそのままドリブルで持ち上がり、インサイドハーフの髙萩洋二郎や左サイドバックの小川諒也とパス交換しながら右から左に場所を移し、ペナルティーエリア内に侵入していく。レアンドロからパスを受けて同じくルーキーの安部柊斗にシュートを打たせるなど、連係の中心にすぐに君臨した感じだった。彼がかき回して相手を押し込むことに成功し、後半38分のレアンドロの先制ゴールを呼び込む要因となった。守備もしつこいし、一瞬のスピードは相手にとってかなり脅威だったはず。物怖じしないのもいい。前評判の高かった紺野はさすがのポテンシャルであった。

 

「思い切りやってこい」とハッパを掛けて送り出した長谷川健太監督は試合後の会見でこう称えている。

 

「(これまでの試合)なかなか出そうで出ないという形だったんですが、きょう出てスッキリとプレーをしてくれて、流れを変えてくれたと思っています。

 今回(オーストラリア勢と)戦うということでAリーグはずっと見ていて、昔の話ですけどチャナティップがタイのチームでプレーしていたときに、オーストラリアのチームが止められなくて、こういうタイプは嫌なんだなという印象を持っていました。紺野もトレーニングのなかで体がキレていましたし、紺野みたいなタイプは多分、(パースの)大柄なディフェンダーは止めづらいだろうな、と。普通にプレーしてくれれば(相手は)嫌だろうなと思っていました」

 

 チームメイトからはコンちゃんと呼ばれているそうだ。FC東京の「コンちゃん」と言えば今野泰幸(ジュビロ磐田)だったが、背番号38のルーキーが早くもチームメイトや長谷川監督のハートをつかんでいるようである。

 

 FC東京は大学出身のルーキーが活躍するというケースが多い。明大在学中に同サッカー部を退部してプロ契約を結び、1年目で日本代表に招集されるようになった長友佑都然り、ルーキーイヤーに13ゴールを挙げた武藤嘉紀然り。特別指定選手の経験を踏まえてプロ1年目から活躍するという流れを考えれば、紺野やインサイドハーフで先発してなかなかのパフォーマンスを見せた安部がいきなりブレイクするということは十分にあり得ると言っていい。

 

 どんなルーキーが出てくるかは、シーズンの楽しみのひとつ。

 

 大学出身者では先のE-1選手権でA代表デビューを果たしたコンサドーレ札幌の大型ボランチ田中駿汰や川崎フロンターレのテクニシャン三笘薫やストライカーの旗手怜央も出場機会を増やしてくるだろう。高校、ユース出身者では静岡学園の全国制覇に貢献した鹿島アントラーズの松村優太、青森山田の司令塔を務めた浦和レッズの武田英寿、そしてバルセロナからの熱視線が報じられているセレッソ大阪の西川潤も楽しみである。

 

 彼らはまた東京オリンピックに出場するU-23代表に入る可能性を持つ。Jリーグでバリバリと活躍すれば、森保一監督もきっと目を留めるに違いない。

 

 誰が出てくるか、スーパールーキー。

 

 FC東京の「コンちゃん」はその候補の1人となりそうだ。


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