ラグビーW杯イングランド大会まで、あと半年。ベスト8入りを狙うジャパンのCTBとして、世界を驚かすプレーを期待されているのが22歳の松島幸太朗だ。ジンバブエ人の父と、日本人の母の間に生まれ、中学時代に留学先の南アフリカでラグビーと出合った。桐蔭学園高では花園制覇に貢献すると、再び南アフリカへ。スーパーラグビーに属するシャークスの下部組織で2年半、フィジカルとスキルを磨いた。日本人離れしたスピードとステップワークで、代表入り後もラインブレイクやトライで観る者をわかせている。現在はスーパーラグビーの強豪ワラタスに期限付き移籍し、さらなるレベルアップを図る若武者に、二宮清純が大舞台への意気込みを訊いた。
(写真:本人曰く性格は「マイペース」。「その方が試合になっても緊張しない」と語る)
二宮: 日本代表ではエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)から、どんなことを要求されましたか。
松島: 僕はアタックを得意としているので、「ステップやスピードを生かして、どんどん相手を抜いてくれ」と言われました。

二宮: 代表ではCTBで起用されています。抜擢されたのは昨年5月のサモア代表戦。松島さん自身もトライを決め、快勝しました(33−14)。エディーさんによると「直感」での起用だったとか。ビックリしたのでは?
松島: センターとしての練習は1〜2日しかしていなかったので、もちろん不安はありました。でも、CTBになることでボールタッチも増えるので、楽しみのほうが多かったです。

二宮: CTBの難しさはどういうところでしょう?
松島: ディフェンスですね。それまで試合に出ることが多かったWTBは守備機会が少ないのに対して、センターはいちばん難しいディフェンスも求められるポジションなので、いろいろと考えさせられました。また、体力の消耗という点でもウイングとは全然違います。

二宮: エディーHCからは「キックに対して、もっとスマートにならないといけない」と指摘されています。これは、どういう意味でしょうか。
松島: たとえば相手がボールを蹴ってきた時、頭を越されたら、すぐに切り返してディフェンスをしないといけない。逆に頭を超えない範囲だったらキャッチして、自分から仕掛けてアタックする。そういう部分の状況判断で、「もっとスマートになってくれ」と言われています。

二宮: エディー・ジャパンは一時、世界ランキングのベスト10入りするなど強化が進んできました。日本のラグビーの良さをどうとらえていますか。
松島: 精度のよさです。ひとりひとりのプレーの精度も大切ですが、チームが精度の高い連携でいかにトライを獲れるか。ここを強く意識して練習しています。

二宮: 松島さんといえば、独特で巧みなステップワークが持ち味です。誰かをモデルにしたのでしょうか。
松島: 南アフリカにはステップをきる選手がたくさんいたので、それを取り入れてオリジナルな形にした結果です。これから、もっと経験を積んで、吸収できるものは全部吸収して、バージョンアップしていきたいと思っています。

二宮: スーパーラグビーが終わると、いよいよW杯です。代表に選ばれれば、松島さんにとっては初出場となりますが、個人的には、どんな目標設定をしていますか。
松島: もちろんW杯は特別な大会ですが、僕は意気込んでしまうと空回りすることがあるので(苦笑)、平常心で、いつも通りにやりたいです。そのなかで自分が得意としているアタックをいかに通用させるかがポイントでしょう。

二宮: 日本は予選プールの初戦で南アフリカと当たりますね。
松島: エディーさんも南アフリカで指導したことがあるので相手のことはよくわかっているし、僕自身も経験してきたので、それはきっと役に立つと考えています。

<現在発売中の『第三文明』2015年5月号でも、松島選手のインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>