11日、第91回競泳日本選手権5日目が行われ、男子200メートル平泳ぎ決勝で小関也朱篤(ミキハウス)が2分7秒77秒の好タイムで初優勝した。2位には立石諒(ミキハウス)が2分9秒54で入った。小関と立石は8月にロシアで行われる世界選手権代表の派遣標準記録(2分9秒90)を突破し、100メートル平泳ぎに続き、代表に内定した。男子200メートル背泳ぎは入江陵介(イトマン東進)が4連覇を達成。2位に入った金子雅紀(YURAS)とともに派遣標準記録(1分57秒18)をクリアし、世界選手権の代表入り。女子200メートルバタフライは星奈津美(ミズノ)が2分6秒66で制した。星は派遣標準記録(2分7秒87)を突破し、3大会連続の世界選手権代表入りを決めた。女子800メートル自由形は、高校1年の佐藤千夏(スウィン大教)が派遣標準記録に及ばなかったものの、初優勝を果たした。
 積極レースも世界新ならず

 平泳ぎの新エースとして期待のかかる小関が、100メートルに続いて200メートルも制した。

 昨年のパンパシフィック選手権でも平泳ぎ2冠を達成した小関。決勝はロンドン五輪銅メダルの立石、昨年王者の小日向一輝(セントラルスポーツ)、世界記録保持者の山口観弘(東洋大)ら強敵ぞろいだったが、それを歯牙にもかけないほど圧倒的な強さだった。

「世界記録を狙いたい」。3日前に豪語した言葉通り、レースでは積極的に仕掛けた。入りの50メートルは28秒57。世界記録を上回るペースに会場はどよめく。快調に飛ばす小関は前半の100メートルを1分0秒86で泳いだ。小関は「(1分)1秒では入れると思っていましたが、レース後に知ってビックリしました」というほど、自分の感覚以上に身体は切れていた。

 150メートルのターンで0秒75差と、依然として世界記録を更新するペースで泳ぎ続けていた。ラスト50メートルに懸けた。目標は32秒台。しかし、その半分を過ぎたところで「身体が止まってしまうんじゃないかと思いました。かき急いだ分もある」と粘れなかった。ラスト50メートルのラップタイムは33秒74だった。

 合計タイムは2分7秒77で自己ベストを0秒57更新。2位に2秒近い差をつける圧勝だったが、小関の狙いは世界記録だった。タイムを確認すると、ゴール板を右手で叩いて悔しがった。昨年世界ランキングベスト5はすべて2分7秒台。しかし世界トップレベルは2時間7分前半であり、小関によれば、差は身体半分ほどだという。「世界との壁は厚い」。夏までの数カ月で、その距離を埋める。

 8月の世界選手権では「(個人種目で)金メダル2つ持って帰りたい」と意気込む。届かなかった世界記録は今後への宿題となった。日本のエースへと成長しつつある大型スイマーが、ロシアの地で世界最速の称号を掴みに行く。

 “V9”もタイムに不満

 実質の9連覇(2011年大会は中止のため、世界選手権代表選考会として実施)にも笑顔はなかった。優勝タイムは1分54秒93。準決勝はいい内容で泳げていただけに「決勝はハマり切ってなかった」と悔やんだ。

「まだまだ改善点がいっぱいある」と感じたレース。特に前半は56秒27と、自己記録よりも0秒66遅かった。「100が良くなかった」と入江。後半型とはいえ、前半で勢いに乗ってつなげたかった。ラストの50メートルも29秒台と、スパートも不発だった。100メートルに続き、背泳ぎ2冠を達成。この種目の第一人者としての面目は保った。

 しかし、内容が良くなかった。入江を指導する道浦健寿コーチも、あくまでも標準は8月としながらも今回のレースを「泳ぎの“顔”が見えてこなかった」と厳しかった。「力強さが感じられず、品評会のようだった。きれいに泳ぐだけで迫力が伝わってこなかった。もっと積極的にチャレンジしてほしい」と注文をつけた。

 自身の日本記録1分52秒51は高速水着時代のもの。もう6年が経とうとしている。「塗り替えないと世界はない。自分に厳しくやっていきたい」と更新を目指す。日本選手権は通過点、照準は夏に合わせている。「世界一だけを狙っていきたい」。その視線は五輪、世界選手権では手にしたことのない金メダルのみに注がれている。

 5日目の主な結果は次の通り。

<男子200メートル背泳ぎ・決勝>
1位 入江陵介(イトマン東進) 1分54秒93
2位 金子雅紀(YURAS) 1分56秒70
3位 松原颯(ANA) 22秒48

<男子200メートル平泳ぎ・決勝>
1位 小関也朱篤(ミキハウス) 2分7秒77
2位 立石諒(ミキハウス) 2分9秒54
3位 小日向一輝(セントラルスポーツ) 2分9秒77

<女子200メートルバタフライ・決勝>
1位 星奈津美(ミズノ) 2分6秒66
2位 中野未夢(アクシー東) 2分10秒36
3位 伊藤悠乃(セントラル藤が丘) 2分10秒81

<女子800メートル自由形・決勝>
1位 佐藤千夏(スウィン大教) 8分33秒71
2位 和田麻里(中京大) 8分34秒73
3位 地田麻未(東洋大) 8分35秒29

※選手名の太字は世界選手権代表内定。

(文・写真/杉浦泰介)