10日、第91回競泳日本選手権4日目が行われ、女子200メートル個人メドレー決勝で渡部香生子(JSS立石)が2分9秒81の日本記録をマークし、3連覇した。渡部は世界選手権の派遣標準記録(2分11秒79)をクリアし、前日の100メートル平泳ぎに続き、2種目で2大会連続の世界選手権代表を決めた。男子200メートル個人メドレーでは萩野公介(東洋大)が1分56秒30の記録で4連覇を達成した。萩野は2位に入った瀬戸大也(JSS毛呂山)とともに派遣標準記録(1分58秒91)を突破し、世界選手権代表に内定。瀬戸は200メートルバタフライ決勝を1分54秒63で制し、同種目でも代表権を獲得した。男女50メートル自由形は、塩浦慎理(イトマン東進)と内田美希(東洋大)が昨年に続き、優勝したが派遣標準記録を超えられなかった。
 逞しさ増した女王

 振り上げた右拳は力強かった。渡部は電光掲示板に表示された記録を見て、ガッツポーズ。自らの成長をタイムで証明した。

 女子200メートル個人メドレー決勝。渡部は最初から積極的に飛ばした。第1泳法のバタフライから先頭に立つと、自らが昨秋にマークした日本記録を上回るハイペース。もはやライバルは他のコースを泳ぐ7人ではなく、韓国・仁川でのアジア競技大会で銀メダルを獲得した時の自分だった。続く背泳ぎで1秒37、得意の平泳ぎで1秒64と日本記録よりも速く泳いだ。

 最後の自由形での50メートルは31秒19でまとめた。フィニッシュタイムは2分9秒81。「ずっと目標としていた」という9秒台をついにマークした。ロンドン五輪、世界選手権バルセロナ大会で上位に入るタイム。世界と戦うために何度も挑戦していた前半から仕掛けるレース展開が実った。一昨年の5月から渡部を指導する竹村吉昭コーチは「去年は粘れなかったが、後半は粘れた」と称えた。

 中学生でロンドン五輪に出場した天才少女も、高校卒業し、大学1年生になった。筋力強化も行い、身体も逞しく成長している。「無駄に大きくなっていないのは記録で出ている」と竹村コーチ。100メートル平泳ぎでは優勝したものの、思うようなタイムが出ず、悔しそうな表情を見せていた。この日は自己ベストを0秒77伸ばし、満天の笑顔で喜んだ。

 2年連続で3冠を達成し、残りは得意の200メートル平泳ぎ。「明日からが一番大事なレース」と萩原智子以来の女子4冠に向け、予選に臨む。

 4日目の主な結果は次の通り。

<男子50メートル自由形・決勝>
1位 塩浦慎理(イトマン東進) 22秒15
2位 中村克(早稲田大) 22秒34
3位 伊藤健太(ミキハウス) 22秒48

<男子200メートルバタフライ・決勝>
1位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分54秒63
2位 坂井聖人(早稲田大) 1分55秒23
3位 松田丈志(セガサミー) 1分56秒02

<男子200メートル個人メドレー・決勝>
1位 萩野公介(東洋大) 1分56秒30
2位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 1分56秒82
3位 藤森太将(ミキハウス) 1分58秒14

<女子50メートル自由形・決勝>
1位 内田美希(東洋大) 25秒01
2位 松本弥生(ミキハウス) 25秒19
3位 池江璃花子(ルネサンス亀戸) 25秒28 ※中学新

<女子200メートル個人メドレー・決勝>
1位 渡部香生子(JSS立石) 2分9秒81 ※日本新
2位 清水咲子(ミキハウス) 2分11秒96
3位 大本里佳(イトマン) 2分12秒14

※選手名の太字は世界選手権代表内定。