’写真:特別表彰のメダルを掛ける片山<左>と特別賞の盾を受け取った飯野)

 第34回日本リーグを伊予銀行テニス部は男子7位で終えた。6年連続決勝トーナメント進出、2年連続の7位だ。個人賞はリーグ通算50勝(シングルス)達成の片山翔が特別顕彰。今大会限りで引退するキャプテンの飯野翔太は特別賞を受賞した。

 

 

 

 

 2月7日にスタートした決勝トーナメント。昨年に続き、神奈川・横浜国際プールで行われた。レッドブロックを3位通過した伊予銀行の相手は、ブルーブロック2位のイカイだった。2大会連続準優勝中で、オールプロの強豪である。伊予銀行はシングルスNo.1にエースで唯一のプロの片山、No.2にルーキーの大塚健太郎を起用。ダブルスは昨年度ベストアマチュア賞に選ばれた飯野と河野優平が組んだ。

 

 伊予銀行はここ4年続けて、決勝トーナメント初戦で敗れている。今年こそ“鬼門”を突破し、準決勝進出を果たしたい。しかし、立ちはだかるイカイの壁は厚かった。シングルスNo.1はタイソン・キアットコウスキ、No.2は徳田廉大、ダブルスは今井慎太郎と本村剛一と実力者を揃えてきた。伊予銀行は0対3で敗れた。

 

(写真:決勝トーナメント2試合に出場したルーキーの大塚。溌剌としたプレーを見せた)

 いずれもストレート負け。スコアだけ見れば完敗にも映るが、中身は違った。日下部聡監督はこう振り返る。

「どの試合もリードする場面があり、セットを取ってもおかしくなかった。取り切れなかったことが今後に向けて課題です」

 

 翌日の5位決定戦に進んだ伊予銀行。対戦相手はブルーブロック4位のレック興発だ。決勝トーナメント1回戦はレッドブロック1位の橋本総業ホールディングスに0対3で敗れていた。レック興発が前日と全く同じメンバーを組んできたのに対し、伊予銀行は前日からメンバーをテコ入れした。シングルスNo.1に河野を抜擢。No.2は大塚のままで、ダブルスは片山と飯野を組ませた。

 

 このオーダー起用はレック興発のシングルスNo.1である関口周一と片山との相性も理由にあった。だが、それ以上に飯野のラストゲームで、キャプテンの想いも汲んだのだろう。片山と飯野は小学生の頃からの付き合いで、早稲田大学時代の同期でもあるのだ。

 

 2年ぶりの5位へ。トップバッターはルーキーで成長著しい大塚だ。大会直前の日本ランキングが44位の守谷総一郎に対し、一歩も退かなかった。第1セットを6-3で先取。第2セットも4-4と一進一退の攻防を見せた。しかし、足を痛めると失速。4-6でこのセットを落とし、最後は0-6だった。

 

(写真:主にダブルスで起用が目立った河野は最終戦シングルスNo.1を任された)

 河野は日本ランキング10位の関口に食らいついた。第1セットは4-6。第2セットはタイブレークの末に落とした。日下部監督も健闘した河野を称えた。

「この1年でサーブに磨きがかかり、得意のネットプレーを織り交ぜた。相手が嫌がる場面も何度かありました。そうやって持ち味を発揮すれば、上位のチームや選手を相手にしても戦えるんだ、と選手たちも自信になったと思います」

 

 この時点で敗戦が決まり、チームの7位は決まったものの、片山と組む飯野にとっては日本リーグラストマッチである。チームとしても勝って送り出したいところだ。片山によれば、2人のペアは昨年の夏、久々に組んで以来だというが、それを感じさせない抜群のコンビネーションを見せた。

 

(写真:抜群のコンビネーションを見せた片山<左>と飯野のダブルス)

「学生時代は組んでいたので、すごく懐かしく思いながらプレーをしていました」と飯野。片山も「阿吽の呼吸というか、翔太は僕を生かすプレーをするし、僕も翔太を生かすようなプレーをする。それが僕らの強みです」と胸を張った。流れるような連係プレーを見せ、コートで躍動した。6-2、6-1と相手を寄せ付けず、ストレート勝ち。同い年の盟友を送り出した片山は「最後の日本リーグで勝ち逃げ。うらやましいですね」と頬を緩めた。

 

「若い選手が多く、まとめるのは大変だった」と飯野。日下部監督はキャプテンの仕事ぶりをこう評した。

「口数自体は多くはないんですが、時には厳しく、時には優しく接してくれた。後輩に対し、近くに寄り添いながらいろいろ世話もしていました。自分から率先して行動し、その姿勢を見せてくれた。準備の大切さを行動で示してくれていたと思います」

 

(写真:最後のダブルス戦を制し、片山と抱き合う飯野。2人の付き合いは長い)

 伊予銀行テニス部での8年間を駆け抜けた。飯野は、その思い出を振り返りつつ、チームの魅力をこう語った。

「悔しい思いはたくさんしましたが、楽しいことばかりでした。伊予銀行はテニス好きが集まっている仲の良いチームです。テニスバカが多いんです」

 雰囲気の良さは外から見ていても伝わってくる。コート、ベンチ、応援席での笑顔が目立つ。

 

 チームを離れる飯野も、もちろん“テニスバカ”の1人だ。

「今すぐじゃないですが、仕事を頑張って落ち着いたら、何らかのかたちで戻ってきたいという気持ちはあります。時々、顔を出しながらアピールしていきたいですね」と冗談交じりに話し、後輩たちにはこうエールを送った。

「来年もいい選手が入ってきます。来年の方が間違いなく強くなる。OBとしてすごく楽しみです」

 

(写真:元キャプテンの植木<前列左端>も駆け付けた。来年のチームには1人の新入行員が加わる)

 片山は盟友の引退に「ぽっかり穴が開くような感じはしますね」と寂しさを覗かせた。それでもチームを牽引する姿勢は変わらない。

「自分が男子の中では一番年上になる。練習に対する姿勢を見せるのもそうですし、細かいところも伝えていきたい。例えばボールを最後まで追い、手を出す。そこが試合で1ポイント取れるか取れないか、勝つか負けるかに繋がってくる。口を酸っぱくして伝えていきたいです」

 

 試合直後は「悔しさでいっぱい」と肩を落としていた日下部監督だが、気持ちは前を向いている。

「今年度は初動負荷トレーニングを採り入れ、調子を上げていった選手もおり、一定の成果を出せました。あとは全体練習が中心だったので、来年度からは個々に特化した技術練習をもっと増やしてもいいかなと思っています」

 横浜で得た収穫と課題を松山に持ち帰り、更なるレベルアップを誓った。

 

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