2年連続で後期優勝を果たしながらリーグチャンピオンシップで敗れた愛媛マンダリンパイレーツ。昨季、キャプテンを務めた太田直哉はその悔しさを真正面から受け止めた。今季、外野手から捕手にコンバートされ、高校以来のマスクを被る。扇の要として悲願の総合優勝と独立リーグ日本一を目指す太田に意気込みを聞いた。

 

 「走れるキャッチャーに」

 昨季はチームとして後期優勝を果たし、個人ではベストナインに選ばれ、まあ良かったと言えば良いシーズンだったと思っています。ただ、リーグチャンピオンシップは勝てず、個人の成績としては打率3割に届かなかった。決して満足できたシーズンではなく、今季こそと気持ちを新たにしています。

 

 昨季を振り返ればキャプテンとして、前期Vを逃した後、練習や試合の準備を率先してやるなど、行動でチームを引っ張ろうと考えていました。あまり口に出してあれこれ言うタイプでもないから、そういう形のキャプテンシーになったのですが、でも後期に向けチームの意識が変わったのは感じました。それが後期Vにつながったのだと思います。

 

 また昨季は北米遠征、関東遠征、フェニックスリーグにアイランドリーグ選抜として参加し、良い経験ができました。外国のリーグやNPB球団というレベルが上のチームと対戦したことは貴重な財産になっています。

 

 今季は打撃のレベルアップとセールスポイントである足をもっとアピールしていきたいと思っています。今季からキャッチャーに転向するので「走れるキャッチャー」になれればNPB入りに向けインパクトも与えられるんじゃないかなと思っています。

 

 コンバートについてはキャッチャーが足りないというチーム事情があったことと、自分自身で「将来的にも複数ポジションを守れた方がいい」という思いがあったからです。フェニックスリーグでは内野手にも挑戦しました。そうした流れの中で小田幸平コーチからキャッチャー転向を勧められたので、すんなりと受け入れられました。

 

 四日市工高(三重)時代以来、6年ぶりのキャッチャーですからやらなきゃいけないことは山積みです。二塁送球はまあまあ投げられるし、これは自分のことなので心配はしていません。それよりもキャッチングやワンバウンドストップなどが重要です。ピッチャーのレベルが高校時代とは全然違い、球の速さや変化球のキレなども増している分、ミットの保持などがとても難しい。リードに関しても打者のレベルも上がっていますから、もう頭をフル回転させないといけない状況です。

 

 小田コーチからは"基本の基本"を大事にしろと言われています。ミットを動かさない、ワンバウンドは必ず止めるなど、リード云々よりもまずはそこを重点を置いてオフは過ごしていました。キャッチャーは大変ですがやはりやりがいがあるポジションですね。

 

 外野手のときもバッターのスイングなどを見てポジショニングをしていましたが、キャチャーだと一番近くで見られるから、もっと細かくバッターのことを観察できる。それで守備位置を動かしたりするのが楽しい。打ち取ったり、ピンチを切り抜けると本当に気持ちがいいですね。子供の頃から内野とキャッチャーを両方やっていましたが、好きなのは内野、特にショートでした。ショートから見る景色が本当に好きだったんです。まだオープン戦で2試合くらいですが、キャッチャーをやってみて、ここからの景色も好きになれそうです。

 

 高校を卒業してクラブチームで2年間プレーしましたが、会社で働きながら土日だけの活動だったので、「もっと野球がやりたい」という思いが強くなり、アイランドリーグのトライアウトを受けました。そのときヒットで二塁まで進み、次の打者がセンターに大飛球を打ちました。背走してセンターがキャッチし、タッチアップで三塁へ。このときセンターの追い方などを見て、一気にホームまで。このとき愛媛のコーチをしていた萩原淳さんが「走塁のセンスがある」と評価してくれ、合格することができました。

 

 キャッチャーと走りの二刀流は難しいことではありますが、自分のカラーとしてそれを確立していきたいですね。打つ方は「キャッチャーは2割5分打てば合格」と言われているので、そこは問題ありません。打撃では三振の数を減らすことが目標です。

 

 個人としては目の前にある課題をひとつひとつクリアしていくことと、チームとしてはリーグ優勝をして日本一を目指したい。扇の要である自分がそれに貢献できるように頑張ります。愛媛の皆さんの熱い応援も今季も期待しています。よろしくお願いします。

 

<太田直哉(おおた・なおや)プロフィール>
1997年8月31日、三重県出身。小学1年生から地元のスポーツ少年団で野球を始め、菰野中時代は菰野ボーイズに所属。内野手と捕手を兼任した。高校は四日市工高に進み、1年秋から捕手に本格転向。高3夏は3番・捕手として出場し、県大会ベスト4まで進んだ。高校卒業後は一般企業に就職し、クラブチームの愛知ベースボール倶楽部で2年間プレー。2017年、トライアウトを受け愛媛マンダリンパイレーツに入団。俊足巧打の外野手として1年目から活躍し、19年、2割9分4厘、24打点、17盗塁の成績を残し、外野手ベストナインに選出された。20年から捕手へ転向。背番号も46から2に変更となった。身長179センチ・体重84キロ。右投右打。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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