「プロレスラーは超人なのですが、自分は四国出身の凡人だと思っている。でも凡人でも努力すれば、超人と闘い、倒すことができる。それをファンの人に証明していきたい」

 こう自らを凡人と称するのは、新日本プロレスに所属するプロレスラー・SHOだ。同期入門のYOHとタッグを組み、現在IWGPジュニアタッグ王座を保持している。

 

 

 

 

 

 

 タッグパートナーのYOHと組むユニット“Roppongi 3K”は、ド派手なコスチュームを纏い、リング上で暴れる。その華やかな出で立ちとは違い、SHOはレスリングをベースにしたパワーファイターだ。アメリカ武者修行中にグレイシー柔術で帯を取得し、グラウンドテクニックにも自信を持っている。

「自分は器用じゃなく、できる技も限られている。ジュニアヘビー級は100kg以下の選手が速い動きや空中戦で闘う。でも自分はトップロープにも上らないようなスタイルです。逆に、地を這うようなイメージで他の選手とは違うことをやろうと思っています。100kg超のヘビー級とも闘えるぐらいのパワーで勝負する」

 

 新春の東京ドーム大会は新日本プロレスにとって特別な興行だ。1992年から定着し、通称イッテンヨンと呼ばれている。『WRESTLE KINGDOM 14』と銘打たれた今年は1月4、5日と史上初の2連戦を行った。凡庸な者にはリングに立つことすらできない檜舞台。Roppongi 3Kは1月5日に行われたIWGPジュニアタッグ選手権試合で、王者エル・ファンタズモ&石森太二組に挑んだ。

 

 開始から13分ほど過ぎたところで、試合は動いた。レフェリーが石森に気を取られている隙を突き、ファンタズモがSHOの急所にパンチを見舞った。ところが、悲鳴を上げたのはファンタズモの方だった。

 

 事の真相をSHOは金と銀の試合用コスチュームの中からゴールドのファウルカップを取り出すことで明らかにした。相手のラフファイトを予測した計算通りの作戦だった。

「去年だけで3発くらい食らっていましたからね。“いい加減対策を取らないといけない”ということで(Roppongi 3Kの監督)ロッキー・ロメロさんとYOHさんと話し合い、ファウルカップを入れることにしました」

 

 これで流れを完全に掌握したRoppongi 3Kは、最後に連携技“STRONG X”をファンタズモにお見舞いした。SHOの必殺技であるクロスアーム式のパッケージパイルドライバー“ショックアロー”に、YOHがトップロープからのダイビングフットスタンプで威力を付け足すRoppongi 3Kの新技だ。トドメを刺すには十分な破壊力だった。SHOはすかさず片エビ固めで3カウントを奪った。

 

 進化の途中

 

 IWGPジュニアタッグのベルトを腰に巻いたRoppongi 3Kは4度目の王座戴冠だったが、2人にとって東京ドーム大会での初白星だった。18年のイッテンヨンはベルトを失い、昨年のイッテンヨンは王座奪還に失敗していた。

「東京ドームで勝てないジンクスがあった。それを変えられた。この大舞台で勝利を掴めたことでチームとして一歩、上に行けたかなと思っています」

 

 この大会で初披露した“STRONG X”は、Roppongi 3Kが11月にSUPER Jr. TAG LEAGUE(スーパー・ジュニア・タッグ・リーグ)を3連覇し、タイトルマッチが決まった時から練っていた必殺技だ。「自分たちのチームといえば“3K”。だからこそどのチームにも警戒されていました」とSHO。合体型のフェイス・バスター“3K”がこれまでのフィニッシュ・ホールドだったが、“このままではダメだ”という思いから生まれた。Roppongi 3K進化の証だ。

 

 Roppongi 3Kはその後、2度の防衛に成功した。いずれも “STRONG X”で試合を決めている。初防衛戦の相手は、SHOによれば「ベルトを持っていたのは自分たちなのに、相手からは“なんでオマエらごときがベルト持っているんだ”と、ずっと上から目線だった」という“鈴木軍”の金丸義信&エル・デスペラード組。試合内容には満足していないが、ベルトを死守した。V2戦は田口隆祐&ロッキー・ロメロ組。Roppongi 3Kの監督と“田口ジャパン”の監督が組む百戦錬磨のコンビだった。

「ロッキーさんは一番手の内を知られている相手。本当にやりづらかった。田口選手も実力のある人なので、その2人を超えられたのは自分たちにとっても大きかった」

 

 SHOは成長を実感しつつも、「まだ一流のレスラーじゃない」と現在地に満足してはいない。それはRoppongi 3Kについても言えるという。

「まだお客さんたちに強いチームだと認められていない。本当に課題ばかり。今回ベルトを持ち、スーパー・ジュニア・タッグ・リーグ3連覇など結果はようやくついてきましたが、お客さんの目をもっと自分たちに向けられるようにしないといけないと思っています」

 言うならば、進化の途中。リング上での“説得力”を得るため、日々トレーニングに励む。

 

 そんなSHOはかつてサッカー少年だった。主なポジションはゴールキーパー。日本を代表する守護神で、超人的なスーパーセーブを披露していた川口能活に憧れた。ではなぜプロレスラーを志すようになったのか――。そのきっかけは新日本プロレスの超人の存在があった。

 

(第2回につづく)

 

SHO(しょー)プロフィール>

1989年8月27日、愛媛県宇和島市生まれ。小学4年からサッカーを始める。高校3年からレスリングに転向。徳山大学では全日本学生選手権グレコローマンスタイル84kg級3位、西日本学生選手権フリースタイル同級準優勝などの実績を残した。卒業後の12年、新日本プロレスに入門。同年11月、デビューを果たした。16年から同期のYOHと共に無期限の海外修行に出た。17年10月にYOHと帰国。新ユニット“Roppongi 3K”としてIWGPジュニアタッグ王座を奪取した。11月にはSUPER Jr. TAG LEAGUEを制覇。現在3連覇中である。今年1月にIWGPジュニアタッグ王座を奪還し、2度の防衛に成功している。身長173cm、体重93kg。

 

(文・プロフィール写真/杉浦泰介、競技写真提供/新日本プロレス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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