新型コロナウイルスの感染拡大によって当然ながらJリーグ再開のメドが立たない状況が続いている。J1、J2は2月の開幕戦以降、試合を消化できていない。延期の決定が繰り返され、4月25日のJ3開幕、5月2日のJ2再開、同9日のJ1再開というプランも、結局は流れてしまった。感染予防、拡散防止の観点に立てば当然の判断である。

 

 5月30日以降の開催についても見通しは立っていない。日本政府が7都府県に対して緊急事態宣言を発令し、感染拡大が収まらない状況下では6月再開というのも現実的には難しくなった。

 

 清水エスパルスが4月15日からトップチームの活動を休止したため、これでJ1全18クラブが活動休止となった。横浜F・マリノスのようにオンラインで選手がつながってトレーニングを行なうなど、クラブそれぞれ工夫を凝らしている。「オフ」ではあるものの、シーズン中のためリーグ再開に向けた準備を怠らないようにしている。

 

 筆者も複数のJリーグ関係者との電話取材で状況をリサーチしたが、やはり感染に不安を抱える選手、スタッフが少なくない。それはそうだろう。関西圏のクラブから選手、関係者に発症者が出たこともあって「もし自分が新型コロナウイルスに感染して、人にも感染させてしまったら」という不安は強くなっているはず。チームの全体練習が再開されたとしても、100%集中できる状況ではないことは確かだ。

 

 報道によればJリーグは8月再開のプランも検討しているようだ。今季のシーズン成立条件は全試合の75%以上消化及び各クラブ50%以上の消化となっている。過密日程は当然になってくるとしても、年越しまで開催期間を延ばす可能性もあるという。いずれにせよ8月再開が2020年シーズンを成立させるためにはギリギリのラインとなってきそうだ。

 

 再開時期についてこれまでは1カ月前後の短期で考えてきたものの、感染拡大の状況を鑑みて数カ月後の中期に広げてきたことは十分に理解できる。ただ、6月、7月と“各駅停車”での判断によって「まだ再開は無理。また延期で」となってしまうと選手のメンタル、フィジカル両面におけるコンディション維持が難しくなるのではないだろうか。

 

 延期が長くなればなるほど、チーム全体でコンディションを上げていくにもある程度の時間が必要になってくる。感染が終息に向かっていることが絶対条件ではあるが、“各駅停車”の判断ではなく、むしろ8月再開で「再設定」してもいいのではないだろうか。そうすればある程度、逆算して準備もできる。

 

 もし8月も無理となれば、大会方式の変更や秋春制移行など大胆な案も検討しなければならなくなる。「再設定」する8月がこれまでの大会規定に沿うやり方で開催できるかどうか最終判断のタイミングになるとも言える。

 

 そしてもうひとつ、Jリーグが「最終手段」としている無観客開催も検討すべきだと考える。状況が好転して再開に至っても、抗ウイルス薬やワクチンができていない以上、観客を入れての開催は感染拡大のリスクにもつながるという声も出てくるだろう。観客収容率50%以下を目指すなどの案も検討されていると聞くが、もしお客さんのなかから感染者が出たとなると、Jリーグ、当該クラブは対応に迫られることになる。もちろん再開時期の状況にもよるのだが、感染リスクを減らす意味でも無観客開催からスタートしていくほうがいいのではないかと個人的には思う。

 

 延期が続いていることでクラブへの経営的ダメージが心配される。大規模災害時補填規定による対応や分配金の配分見直しを含めて救済案についてJリーグはいろいろと知恵を絞っているようである。

 

 無観客開催からスタートするとなるとこれまたクラブの経営に影響が出る。

 

 昨年公開された2018年度のクラブ経営情報開示資料を見ると、年間の入場料収入はJ1平均8億400万円、J2平均1億9900万円、J3平均2900万円となっている。クラブ平均の営業収益の割合からすればJ1で17%、J2で13%、J3で7%。グッズなどの関連収入にも響くだろう。収入の規模が小さいクラブにとっては大打撃となってしまう。

 

 入場料が入ってこないのはクラブにとって痛い。だがシーズンを成立させることによって入ってくるお金がある。検討されているJリーグの救済策もある。独占契約を結ぶ「ダ・ゾーン」の放映権料を考えても、再開できる状況になれば何とかシーズンを成立させたい。

 

 人命優先、クラブ救済、選手、スタッフへの配慮……フェーズに合わせた対応がJリーグには求められる。「再延期」から「再設定」へ、最終手段としていた無観客開催の本格検討へ。そろそろ本線とすべきプランであるようにも感じている。


◎バックナンバーはこちらから