女子やり投げ・海老原、2年ぶり日本新 世界陸上代表濃厚 〜セイコーゴールデンGP〜

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 10日、陸上の世界選手権(8月・北京)の日本代表選考会を兼ねた「IAAF(国際陸上競技連盟)ワールドチャレンジ第3戦 セイコーゴールデングランプリ」が神奈川・等々力競技場で行われた。女子やり投げでは、海老原有希(スズキ浜松AC)が自身の日本記録を更新する63メートル80をマークし、4位に入った。海老原は派遣設定記録(63メートル34)を上回り、4大会連続での世界選手権代表に大きく近付いた。男子100メートル決勝は高瀬慧(富士通)が10秒09で2位、女子200メートル決勝は福島千里(北海道ハイテクAC)が23秒11で4位だった。高瀬と福島は派遣標準記録をクリアしたため、日本選手権(6月・新潟)の同種目で優勝すれば、世界選手権代表に内定する。男子200メートル決勝は既に派遣標準記録(20秒50)を突破している藤光謙司(ゼンリン)が20秒33で優勝した。その他の種目では、男子走り高跳びで世界選手権モスクワ大会王者のボーダン・ボンダレンコ(ウクライナ)が、女子100メートルハードルはロンドン五輪金メダリストのサリー・ピアソン(オーストラリア)が制した。
 海老原の会心のスローに1万6000人の観衆が沸いた。女子やり投げ決勝は海老原が、2013年の織田幹雄国際記念陸上以来の日本記録を更新した。

 正午過ぎにスタートした女子やり投げ。ロンドン五輪8位のマダラ・パラメイカ(ラトビア)、同ファイナリストのエリザベス・グリードル(カナダ)ら4人の海外勢は、いずれも60メートルを超える自己記録を持ち、うち3人は海老原の自己ベスト(62メートル83)よりも上回っていた。世界のレベルは60メートル超えが当たり前。1投目からブリタニー・ボーマン(米国)が64メートル75、グリードルが63メートル71と、その力を見せつけられた。

 1投目は56メートル86だった海老原も、2投目で60メートル53をマークし、海外勢を追いかける。海老原は「2投目は惜しい投てきだった」と手応えを掴んでいた。3投目はファウルで記録なし、4投目は58メートル32と記録は伸びなかったが、5投目に晴天の空を突き抜けるようなビッグスローが飛び出す。

 本人としても手応え十分の投てきだった。目視で日本記録更新を確認すると、跳び上がって喜んだ。記録は63メートル80――。正式に記録が表示されると、海老原は何度もガッツポーズを作った。2年ぶりの日本新は、記録を約1メートル塗り替えるビッグスロー。「2年経っちゃったんだな。長いようで短いようで。皆さんにはお待たせしましたというコメントしかありません」とおどけた。海老原はグリードル、ボーマン、パラメイカに次ぐ4位入賞を果たした。

 昨年は足首のケガもあって思うような結果を残せなかった。シーズンベストは60メートル25。連覇のかかった秋のアジア競技大会では、4位に終わり、2大会連続で獲得していたメダルにすら届かなかった。ようやくケガも癒え、身体も動くようになった今シーズン。しかし、4月の織田記念では、60メートル超えは1度もなかった。海老原はそこでの反省を踏まえ、タイミングの取り方を意識した。助走の微調整がうまくハマり、好記録が生まれたのだ。

 日本陸上競技連盟が定めた派遣設定記録をクリアしたため、日本選手権で8位以内に入れば、世界選手権代表入りを果たす。「まずは日本選手権でしっかり勝ち切って、世界陸上の代表を決め、入賞を目標に持って取り組んでいきたい」。世界選手権初のファイナリストへ。日本記録更新にも「私はもっと上を目指さないといけない」と海老原は歩みを止めるつもりはない。

 男子スプリント陣は中堅選手の活躍が目立った。29歳の藤光と26歳の高瀬だ。大会直前に日本勢は期待の若手である桐生祥秀(東洋大)と山縣亮太(セイコー)が出場を辞退。海外勢では昨秋のアジア大会男子100メートル金メダリストのフェミ・オグノデ(カタール)の欠場が決まった。藤光と高瀬はこうした主役候補たちの不在を感じさせぬ走りで、スタジアムを沸かせた。

 200メートルでは藤光が自己ベストをマークした。世界リレー選手権で日本の銅メダル獲得に貢献した29歳は連戦続きで「コンディションは悪い」と言いながらも好スタートを切る。カーブを曲がり終え、最後の直線で抜け出すと、そのまま他の追い上げを許さなかった。ラスト20〜30メートルを本人は「バタついた」と振り返ったものの、20秒33とトップでフィニッシュ。ゴール後、人差し指を立てて、自らの優勝を誇示した。5年ぶりの自己新は日本歴代6位のものだった。

 100メートルはアジア大会同種目銅メダリストの高瀬が、アジアのライバル中国勢らと競り合いながら2位に入った。反応よく飛び出すと、向かい風をものともせず、10秒09の自己ベストをマークした。日本歴代7位タイの好記録。高瀬自身は「自分の気持ちをぶつけるレースができた」と胸を張った。1週間前の静岡国際陸上競技大会では、200メートルで優勝したものの、気持が乗らず、不本意な結果に終わった。そのことが高瀬の闘争心に火をつけた。ウアウィルフリード・コッフィ(コートジボワール)には記録上、同タイムながら僅かな差で敗れたが、アジア大会で先着を許したスー・ビンチャン(中国)には競り勝った。
(写真:日本選手権では100Mと200Mの2冠を狙う高瀬)

 藤光は200メートルで、高瀬は100メートルで、いずれも日本選手権優勝すれば、北京行きの切符を手にする。夏日の川崎を颯爽と駆け抜けた2人。日本スプリント界の“主役はオレたちだ!”と言わんばかりのレースで、ゴールデンウィーク最終日に開催された大会を盛り上げた。

 主な決勝の結果は次の通り。

<男子100メートル決勝>
1位 ウアウィルフリード・コッフィ(コートジボワール) 10秒09
2位 高瀬慧(富士通) 10秒09
3位 スー・ビンチャン(中国) 10秒10

<男子200メートル決勝>
1位 藤光謙司(ゼンリン) 20秒33
2位 カルビン・ヌカナタ(ケニア) 20秒50
3位 シェイ・ツェンナイ(中国) 20秒61

<男子走り高跳び決勝>
1位 ボーダン・ボンダレンコ(ウクライナ) 2メートル37
2位 チャン・グウェイ(中国) 2メートル28 ※順位は試技数による
3位 衛藤昂(AGF) 2メートル28
4位 高張広海(日立ICT) 2メートル28
(写真:ただひとり2メートル30台を記録し、圧勝したボンダレンコ)

<女子200メートル決勝>
1位 シモーン・フェイシー(ジャマイカ) 22秒65
2位 ティファニー・タウンゼント(米国) 22秒85
3位 マリージョゼ・タルー(コートジボワール) 22秒88
4位 福島千里(北海道ハイテクAC) 23秒11

<女子100メートルハードル決勝>
1位 サリー・ピアソン(オーストラリア) 12秒66
2位 クイーン・ハリソン(米国) 12秒75
3位 ティネイヤ・ジョーンズ(米国) 12秒83

<女子やり投げ決勝>
1位 エリザベス・グリードル(カナダ) 64メートル83
2位 ブリタニー・ボーマン(米国) 64メートル75
3位 マダラ・パラメイカ(ラトビア) 64メートル07
4位 海老原有希(スズキ浜松AC) 63メートル80 ※日本新

(文・写真/杉浦泰介)
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