新型コロナウイルスに感染し、病床から復帰した田嶋幸三日本サッカー協会会長が、退院後、ウェブ上で会見を行った。
その中で、注目すべき発言があった。
「ウチの家族ですらPCR検査をしてもらえなかった。それは検査を増やさないように(医療機関が)努力しているのではないか。軽症者をどこにどう集めて治療・隔離しようとか、今のルールでは陰性が2回出ないと退院できない。そうするとなかなか退院できず、どんどんベッドが埋まっていってしまう。これだと重症の方が出たときに、入れないというのが目に見えている」
新型コロナウイルスに感染し、入院した者にしかわからない貴重な指摘である。
東京では4月5日現在、1日の感染確認者数としては過去最多の143人の陽性が判明した。病床の確保が課題となっている今、このまま感染拡大が続けば、医療がパンクするのは目に見えている。
病床が足りないのなら、東京五輪・パラリンピックの1年延期も決まったことだし、空いている選手村を代用すべきではないか。
大会終了後、選手村は分譲マンションとして売り出されることが決まっており、一部の入居予定者から「資産価値が下がる」との声が上がっているというが、ならば補償の対象にすればいい。悪者になってでも誰かがリーダーシップを発揮しない限り、この難局は乗り越えられないだろう。
ビル・ゲイツが、人類の危機は「ミサイルではなく微生物なのだ」と述べたのは、今から5年前のことだ。
発言を聞いても、最初はピンとこなかった。
凡人は今しか見えないが、賢人の目には未来の姿が映っていたのだろう。
ゲイツはこうも語っている。
「私たちは核の抑制に巨額の費用をつぎ込んできたが、疫病の抑制システムの創出については、ほとんど何もやってこなかった」
残念なことにゲイツの予言はピタリと的中した。
新型コロナウイルスが世界規模で増殖を続ける今、人間の力は、あまりにも無力である。今年7月24日に開幕予定だった東京五輪も、1年の延期が決まった。
しかし、これとて実施できる保証はどこにもない。森喜朗組織委員会会長は、「神頼み」と語ったが、これは正直な答えである。
せめてワクチンの開発を開催条件に加えるべきではなかったか。忌引きの最中に運動会はふさわしくない。
<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2020年5月1日号に掲載されたものを一部再構成しました>
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