この4月から伊予銀行テニス部にニューフェイスが加わった。新入行員は法政大学を卒業した楠原悠介だ。昨年11月の全日本学生室内選手権では1学年後輩の柚木武と組んだダブルスで準優勝。現在のJTA(日本テニス協会)ランキングはシングルス35位、ダブルスは28位だ。

 

 

 

 

 岡山県出身の楠原が愛媛の伊予銀行に加わったのは、2年前に福井で行われた国民体育大会がきっかけだった。

「大学3年時の福井国体で岡山県代表として出場した際、愛媛県代表の伊予銀行と準決勝で対戦しました。そこでいい試合をできたこともあり、声を掛けてもらったんです」

 

 成年男子の部準決勝、楠原は岡山県代表の第1シングルスとして伊予銀行のエース片山翔と対戦した。8-9で敗れたものの、プロ選手相手に大接戦を演じたことで評価を上げた。楠原自身、大学卒業後もテニスを続けたいと思っていた。伊予銀行には、大学こそ違うが、同じ岡山県出身の河野優平がいたことも大きい。2学年上の先輩に伊予銀行の環境面を聞き、入行を決意したのである。

 

 日下部聡監督はルーキーをこう評価している。

「きれいなテニスをするという印象です。スライス、スピンなどいろいろなショットを打ち、テクニックのあるオールラウンダー。これといった穴が少ないタイプですね」

 楠原自身も「苦手なショットがない。全部平均的にできるのが強み」と言い、得意なショットに「ネットプレーやボレー」を挙げる。

 

 楠原は「考えるテニス」を身上とする。ターニングポイントは高校2年。「それまではミスを恐れず、ひたすら打つ」タイプだったが、全国高校総合体育大会(インターハイ)のメンバー入りを逃したことで、現在のスタイルに変更した。

「先生から『来年はメンバーになって他の人を“ギャフン”と言わせるように努力しろ』と言われたんです。そこから考えて努力するようになりました。練習後、家に帰ってから腕立て伏せや柔軟運動に取り組むようになった。毎日つけていたテニスノートも、工夫し、どういう意識でやるかなど記すようになりました。練習が“練習の練習”ではなく“試合のための練習”になったんです」

 

 その努力の甲斐あり、全国選抜高校大会、インターハイに主力として出場。いずれも団体ベスト4に貢献した。個人としては全国選抜5位の実績を評価され、日・韓・中ジュニア交流競技会の日本選手団に選ばれた。

 

 JTAランキング28位のダブルスの実績は十分、全日本学生室内選手権で準優勝した。そのほか全日本選手権でベスト16、全日本室内選手権ではベスト8に入った。「誰と組んでも対応できると思います」とペアリングに得手不得手はないという。シングルスでも結果を残し、JTAランキング35位は伊予銀行内でも31位の片山に次ぐ順位だ。楠原はまず10月に開催予定の鹿児島国体、11月開幕の日本リーグへの出場を目指す。

 

 楠原はこう意気込みを語った。

「プロの片山さんや先輩たちから吸収できるところは全部吸収したい。いつかは片山さんたちプロにも勝てるような力を付けたいです。チームに貢献できるよう頑張りたい」 

 

 しかし、新入行員も新型コロナウイルス感染拡大に大きな影響を受けている。楠原は4月10日から愛媛での新生活をスタートさせたが、研修は自宅で行うしかなかった。テニスの練習も制限される毎日だ。まだ本格的な練習に参加できておらず、寮のトレーニング施設で体幹を鍛えるなどしている。「約1カ月はまともにテニスをできていないので、ウズウズしています」

 

 昨季限りで引退した前キャプテンの飯野翔太は昨季の日本リーグ終了後、「来季は楠原君が入り、伊予銀行は怖いチームになると思う。すごく楽しみです」と話していた。現在は新型コロナウイルスの影響で、先の見えない状況が続くが、伊予銀行テニス部に1人、将来が楽しみなルーキーが加わった。

 

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