緊急事態宣言が発令され、未だに新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るっています。国難において、Jリーグ・村井満チェアマンとJリーグ関係者の意思決定の速さは素晴らしいですね。この状況を少しでも好転させようとする姿勢がうかがえます。

 

 検査場として施設貸出案

 

 村井チェアマンは4月20日、首相官邸を訪れ菅義偉官房長官と会談した際、39都道府県にあるJリーグ56クラブのクラブハウスを新型コロナウイルスの検査場として使用することを提案しました。Jリーグ発足から27年、これだけ地域に根付いてきました。Jクラブの承認を得ていない段階での提案レベルですが、施設提供はひとつの案として素晴らしいと思います。

 

 一方で、考えなければならないこともあります。今後もクラブハウスを使用する選手、スタッフがどう思っているのか、彼らの意見に耳を傾ける必要がありますね。クラブハウスなら3密にならない条件が整っていたとしても、不安に思う選手やスタッフがいるかもしれません。その選手やスタッフにも守るべき家族がいますからね。返却時の消毒対策など考えていかなければなりません。

 

 Jリーグとしてこの国難にどういうかたちで貢献できるのか。模索し、提案する姿勢は素晴らしい。地域密着を謳うJリーグのリーダーにふさわしいかじ取りです。非常に頼もしいなと感じます。

 

 地域救済だけでなくクラブ救済措置の発表もされました。元々、経営難に陥ったJクラブ救済のため「リーグ戦安定開催融資規定」制度が設けられていました。この融資制度がコロナ禍において、大幅緩和されました。返済期限は2023年12月末まで。勝ち点減点なし(本来、10点減点)、担保なし(本来あり)、融資を受けたクラブ名の公表なし(本来は公表する)。村井チェアマンは新型コロナウイルスに関する最初の会見の時にも経営難に陥るクラブについて懸念していました。クラブ救済に向け、有言実行と言ったところでしょう。

 

 3つの再開案もあるが……

 

 再開案については6月再開、7月開催、8月開催の3つを考えているとのことです。現実的に考えると6月は難しいでしょう。トレーニングをほとんどできていない状況でいきなり公式戦を行っても、選手が怪我をしてしまう恐れがあります。また、この期間に心肺機能も緩やかに下がってきてしまっているはず。選手のコンディション面を考慮すると、6月は避けた方が無難ですね。

 

 7月、8月案もありますが僕は9月頃、秋くらいの再開になるのかなと予想しています。緊急事態宣言を発令した時点で、5月6日までを当面の期間としています。宣言解除後、感染の爆発的ピークは過ぎたとしても、感染リスクは下がり切っていないでしょう。そう考えると、もう少し時間を設ける必要があるのかなと感じます。

 

 コロナ禍は学生たちにも大きな影響を与えています。先日、インターハイ中止が決定しました。僕が支配人を務める鹿島ハイツは6月、7月、8月の週末の予約はまだキャンセルになってはいませんが、これも様子を見ている段階でしょう。茨城県も部活動を自粛させるなど、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために必死です。とはいえ、子供たちは動きたくて仕方ないでしょう。予約されたお客様の中には大会形式ではなく、単独チームでも構わないから何とか子供たちに試合をやらせてあげたい、という方もいらっしゃいます。努力を重ねてきた学生たちが報われるためにも日本サッカー協会、Jリーグが希望の光となり何か表現できればいいですよね。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で世界的に様々なスポーツが中断、延期を余儀なくされています。それに伴い、僕のコラムも一時休載となります。この場で楽しくサッカーを語れる日が一日でも早く訪れることを願っています。また、新型コロナウイルスに感染されてしまった方々の一日でも早い回復を願っています。現在、感染されていない方々は引き続き、手洗い、うがい、3密回避など十分に気をつけましょう。このパンデミックが少しでも早く解決することを祈っています。今は皆、力を合わせて我慢の時です。では、またこのコラムで!

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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