3年目にしてチームの大黒柱だ。
 巨人の右腕・菅野智之が年々、安定感を増している。2年連続開幕投手を託された今季は、ここまで防御率1.55。打線の援護に恵まれず、勝敗こそ5勝4敗だが、4連覇を狙う常勝軍団においては、最も信頼できる先発と言ってよい。昨季は12勝(5敗)をあげてMVPを獲得したものの、ヒジの故障でクライマックスシリーズに登板できず、チームも日本シリーズ出場を逃した。「後悔の方が強い」という1年を踏まえ、今季はどんなテーマを掲げてシーズンに臨んでいるのか。二宮清純がインタビューした。
(写真:開幕前には「球数を減らして地上波で放送している間に試合を終わらせたい」と“宣言”していた)
二宮: 菅野さんは大学時代は速球とスライダーを軸にした投球スタイルでしたが、プロに入ってから変化球の数を増やしましたね。
菅野: そうですね。ストレート、スライダーにカーブ、速いカーブ、スライダー、カット、シュート、フォークとほぼ7種類になりました。大学時代から投げていたものもありますが、あまり試合で使えるレベルではなかったんです。

二宮: それだけ球種が豊富だとバッターも狙い球を絞りにくい。
菅野: ただ、球種が多すぎると、こちらも組み立てが難しくなるんです。キャッチャーも悩んで、サインを出すのが遅くなりますし、僕が首を振れば、やりとりがさらに長くなる。テンポが悪くなって、球数も多くなってしまうのが昨季の反省点でした。今季は敢えて使う球種を減らして、シンプルなピッチングを心がけています。

二宮: シンプルにする分、ひとつひとつのボールの精度を高めるということでしょうか。
菅野: 今季は総合力で勝負したいと考えています。どれかひとつではなく、すべてをレベルアップさせたい。昨季はストレートに焦点を当ててピッチングをしていました。もちろん、ストレートは一番重要なボールですが、今季は他のボールも含めて高めていきたいんです。

二宮: それが、1年トータルで活躍することにつながるというわけですね。
菅野: はい。ルーキーのシーズンに比べて、去年はムダなボールが多かったと思います。中5日で回っていた時期もあったので、なかなか疲労が抜けないままマウンドに上がっていたんです。それが最終的には故障にもつながったととらえています。

二宮: 球数が多いと、最後の勝負どころでツケが回ってきてしまうと?
菅野: シーズンもそうですし、1試合でも終盤の大事なところで影響が出てきてしまう。だからこそ、あれこれ投げて遊び球を増やすのではなく、シンプルなピッチングをしたいんです。なるべく少ない球数で長いイニングを投げる。そして1年間フルでローテーションを守る。これが先発として一番大事だと考えています。

二宮: 菅野さんが注目を集め出した頃は、「原辰徳監督の甥っ子」という表現がよく使われていました。その点ばかりにスポットライトが当たるのは内心、快く思わなかったのでは?
菅野: う〜ん、イヤという感覚はなかったですよ。ただ、今は以前よりも気にならなくなりましたね。もう最近はそういう言い方をされなくなってきましたから。

二宮: 確かにそうですね。原監督という枕詞をつけなくても、菅野さんがしっかり実績を残して自身のブランドを確立していると言えます。
菅野: それは僕自身、ものすごくうれしいことです。原監督の……と言われないピッチャーになることもプロ入りにあたって、ひとつの目標でしたから。だから、そういった表現が気にならなくなってきたんだと思っています。

<現在発売中の講談社『週刊現代』では菅野投手のインタビュー記事が掲載されています。こちらも併せてお楽しみください>