(写真:外でしか得られないこともある)

 外で運動することは悪いこと?

 このところ、ランニングや公園使用などで、世間の風当たりが強い野外でのスポーツ。メディアの報道もあり、公園での密を避けるために遊具や運動施設の閉鎖が続いているし、ランニングも報道がきっかけにマスク着用が訴えかけられるなど、居心地が悪い。運動に縁のないコメンテーターからは「運動は不要不急なのでは」という発言まで出る始末……。すっかり肩身の狭い状況になってしまった。

 

 本来であれば、学校や公園で遊んでいる子供たち。大切な成長過程において様々な運動刺激をカラダに与えることは大変重要で、だからこそ体育の授業もあるわけだが、今の時期はそれもまともには行えない。家でできる運動も多少はあるが、日本の住宅事情を考慮すると、多くを求めることはできないのが実情だ。ましてや少子化で子供たちは同世代とコミュニケーションをとれる機会が少ないストレスもある。

 

 さらに外出機会の減少により日光を浴びる時間も減少。人間は日光に含まれる紫外線を浴びることでビタミンDを生成して、カルシウムの吸収を助けている。つまり子供たちの成長には欠かせない。もっともこれは成人も同様で、日光が不足すると、自分自身の骨を利用しカルシウムを調達するので、骨粗鬆症のリスクも高まるのだ。親たちも子供のケアに疲弊している中で、外遊びを制限しすぎると、家でゲームばかりという状況になっているのではないだろうか。

 

 本来であれば、外遊びの際はマスクをし、友達と近づき過ぎない。遊具を使用した後に手洗い消毒を徹底するなどのルールを守らせることを注意して、適度に外遊びをさせてあげることこそ必要なのではないかと思う。

 

 ランニングも同様で、他人との距離をおく、集団で行わない、というような基本的な注意点を守れば感染リスクは極めて低い。だが、研究途上にあった流体力学的なコンピューターのシミュレーションがメディアを賑わし、感染リスクの高い行動のようになってしまった。あの研究自体が感染リスクにつながるかどうかのものではないということは、本人も含めて認められているところなのだが、一度火のついた議論は元のさやには収まらない。

 

 その辺りは、情報も含めてこちらで書いているので参考までに。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10158249415903781&set=a.10150692610538781&type=3&theater

 

 運動不足に注意

 

 ところで、自粛生活中に注意しなければならないことに、運動不足というのがある。

 20歳以下では成長への影響、30~50代は生活習慣病が進むし、60代以上ではフレイル(老人性虚弱)が進む可能性もある。どれもすでに専門家からの指摘は出ているが、コロナを恐れるがあまりに、おざなりにされている印象、コロナを恐れるだけではなく適切な生活を送らなければ、その後の生活に大きな影響を及ぼしてしまう。今年の秋には不健康人口が急増し、健康寿命が短くなっていき、医療費は高騰。そんな世の中になってしまう可能性は十分にあるのだ。

 

 さらに、精神的な不安もある。家にこもりっきりでカラダも動かさず、人とのコミュニケーションも減り、TVからはネガティブなニュースばかり。こんな生活ではストレスが溜まったり、鬱になったりしてしまう。これは子供も大人も同じ。大勢の人と会うことが現状はできないからこそ、自身のカラダを動かし、気持ちのバランスを整えることが大変重要になってくる。公園に行けなかったり、外で運動しづらくなってくると、心もカラダも病んでくるのは当然なのである。

 

 実はこうした、心とカラダの不健康はコロナウイルス対策としても問題である。

 このような不健康状態は、カラダの免疫能力を著しく低下させることが分かっている。子供の体力が落ちたり、大人が太ったり、ストレスを抱えたりすることは、確実にウイルスに対して弱くなってしまうのだ。ウイルスを避け、打ち勝つために家にいたのに、結果的にウイルスに負けやすい環境にしているとしたら……。最近の世の中の苛立ちをみていると、まさにこちらに向かっているのではと心配になる。

 

 今も医療現場や、流通業界で働いていただいている方への感謝はもちろん忘れてはならないはずなのに、それに対する差別や偏見がはびこるなんて、すでに精神的に良い状態ではないことの証明であろう。

 

 誤解を恐れずに言うならば、図らずもこのウイルスから与えられた時間を有効に使いたい。

 今朝も親子でランニングをしている家族とすれ違った。どう見ても普段は走ってない風貌のご両親だが親子での姿は微笑ましい。縄跳びを行っている親子にもよく会うようになった。このように運動とあらためて向き合ってくれていることだけでも素晴らしいのではないか。極論をいえば、運動でなくてもいい。川沿いのベンチでゆっくり読書する紳士。普段はそんな時間が取れないだろうが、せっかくできた時間を有効に使いたい。


 やってくるコロナ後の世界で頑張れるように、気持ちとカラダの準備をしようではないかと。

 梅雨の前の青空の下で、じっくり走りながらそんなことに想いを馳せるのも悪くない。

 

白戸太朗(しらと・たろう)プロフィール

17shiratoPF スポーツナビゲーター&プロトライアスリート。日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマン(ロングディスタンス)へ転向、息の長い活動を続ける。近年はアドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。スカイパーフェクTV(J Sports)のレギュラーキャスターをつとめるなど、スポーツを多角的に説くナビゲータとして活躍中。08年11月、トライアスロンを国内に普及、発展させていくための会社「株式会社アスロニア」を設立、代表取締役を務める。17年7月より東京都議会議員。著書に『仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?』(マガジンハウス)、石田淳氏との共著『挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術』(清流出版)。最新刊は『大切なのは「動く勇気」 トライアスロンから学ぶ快適人生術』 (TWJ books)

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