MS&ADなでしこカップ2015が24日、香川県立丸亀競技場で行われ、なでしこジャパン(日本女子代表、FIFAランキング4位)はニュージーランド代表(同17位)と対戦した。W杯の初戦を約2週間後に控えたなでしこは、1年ぶりに代表復帰したMF澤穂希がスタメン出場。その澤が23分、セットプレーから右足で押しこみ、先取点をあげる。後半は相手に押しこまれる場面が増えたものの、ゴールを割らせず、1−0で逃げ切った。

 澤、歴代最多更新の83ゴール目(丸亀)
日本女子代表 1−0 ニュージーランド女子代表
【得点】
[日本] 澤穂希(23分)
「澤の神が勝利に導いてくれた」
 この日、57歳の誕生日を迎えた佐々木則夫監督は殊勲の36歳を“神”と持ち上げた。

 364日ぶりにピッチに現れた背番号10がキラリと光ったのは23分だ。MF宮間あやの左コーナーキック。澤はマークについた相手DFにフェイントを仕掛けて、うまくかわし、ゴール前に顔を出す。そこへピンポイントでボールが入り、右足でゴールネットに突き刺した。

 前回のW杯決勝での起死回生の同点弾を思い起こさせるような先制点。「宮間選手のボールが良かった。触るだけでした」と澤は謙遜したが、相手を外す巧みなポジショニングは経験のなせる業だ。このゴールは代表では歴代最多を更新する83得点目。1年のブランクを全く感じさせず、大黒柱が仕事をやってのける。

 澤の復帰はなでしこの攻撃にも厚みをもたらせた。背番号10がボランチに入ったことで、宮間が左サイドハーフのポジションから次々にクロスをあげ、相手ゴールを脅かす。前半はなでしこペースで、1点をリードして折り返した。

 しかし、一転、後半は危ないシーンが増えていく。立ち上がりには裏をとられ、PA内で熊谷紗希が相手を引っ張って倒してしまう。判定はPK。同点に追いつかれる最大のピンチだったが、相手がキックをふかして枠をとらえられず、事なきを得る。

 さらに13分にはハイボールに対してGK山根恵里奈が飛び出すも捕球できず、ヘッドで合わせた浮き球が無人のゴールに飛ぶ。DF岩清水梓がギリギリのタイミングで戻ってクリア。自陣で受け身に回る時間が続く。

 追加点を獲りたいなでしこは、なでしこリーグ得点トップを走るFW菅澤優衣香らを投入。攻撃の活性化を図る。しかし、ミスも目立ち、ボールが前線に収まらない。ニュージーランドに決定力がなかった点も幸いした勝利だった。

 佐々木監督は「課題の方が多かった。前半後半の立ち上がりはリズムがつかめなかった」と試合中は厳しい表情もみせた。ただ、澤が「失点0で勝ち抜けたのは良かった」と振り返ったように、守備が弱点と言われてきた最近のなでしこにおいて、ゴールを与えなかった点は一定の評価ができるだろう。

「神頼みではなく、力をつけて初戦に臨みたい」
 指揮官は本番までに、さらなるブラッシュアップを誓った。なでしこは28日に長野でイタリア代表とキリンチャレンジカップを戦ってW杯の開催地カナダへ。日本時間9日にグループリーグ初戦のスイス戦に臨む。