2018FIFAワールドカップロシアのアジア2次予選(兼アジアカップ2019予選)が16日、埼玉スタジアムで行われ、日本代表(FIFAランキング52位)はシンガポール代表(同154位)に0−0で引き分けた。日本は序盤から20本以上のシュートを放ちながら、相手GKの好守に阻まれ、ゴールをあげられない。後半には原口元気、武藤嘉紀ら前線の選手を投入したものの、格下相手に予想外のスコアレスドローに終わった。

 守り固めた相手から得点奪えず(埼玉)
日本代表 0−0 シンガポール代表
 23本のシュートに14本のコーナーキックの雨あられ。しかし、90分後にもたらされたのは、スタジアムを襲った激しい雷雨、そして先行きに暗雲をもたらせるドローという結末だった。
「サッカー人生を長く過ごしたが、こんな試合は初めて」
 ホームでまさかの引き分けにヴァイッド・ハリルホジッチ監督も喉元を押さえて、「なかなか消化できない試合」と苦しそうに言葉を絞りだした。

 スタメンは5日前のイラク戦と10名が一緒。ひとりDF長友佑都のみ、試合前に左臀部の張りを訴えたため、DF太田宏介が左サイドバックに入った。

「相手が守備しかしないことは予想していた」と指揮官が明かしたように、シンガポールはDFラインを下げ、攻撃はカウンターに徹する作戦をとってきた。そんな相手に日本は立ち上がりから攻めまくる。

 キックオフ直後にはPA外からFW宇佐美貴史がファーストシュート。12分には右サイドからMF香川真司が右足を振り抜く。相手GKのイズワン・マフブドは手を伸ばして、これを弾きだす。
 
 22分には細かくパスをつないでMF長谷部誠が中央からPA内に侵入。右足で低い弾道を放つも、またも相手GKがパンチングで逃れた。30分にも中央で長谷部、FW本田圭佑、宇佐美とパスを入れ、最後は右サイドからFW岡崎慎司がシュート。これもGKに身を呈して制され、なかなかゴールを割れない。ジリジリする展開に、思わずハリルホジッチ監督も、目の前のペットボトルを投げつけた。

 圧倒的に押しこみながら、スコアレスで前半終了。ハーフタイム中、指揮官は「中から攻めるとフィニッシュが難しい。外から斜めに逆サイドへのボールを出してくれ」と選手たちに指示を出す。

 その外から入れたボールで10分には決定的チャンスを迎える。左サイドからのクロスをゴール前の岡崎が頭で叩きつけた。しかし、これもGKマフブドが反応良く体を投げ出し、ゴールラインを割る寸前でかきだす。

 局面を打開したい指揮官は香川に代えて、FW大迫勇也を投入。布陣を2トップにしてボールを前線に集める戦略をとる。18分には宇佐美貴史が左サイドからゴール前に放り込むが、GKはジャンプ一番、パンチング。これを本田が詰めてヘディングしたが、GKの正面を突いた。

 日本の好機はまだ続く。22分に右CKにゴール中央で本田が頭を合わせる。ところが、これもマフブドが対応してクリア。シンガポールのベルント・シュタンゲ監督が「日本でプレーする日も来るのでは」とジョークを飛ばしたように、相手守護神がファインセーブを連発し、サムライブルーは1点が遠い。

 さらに26分は、本田の右クロスにファーサイドでDF槙野智章がヘディングシュート。スタンドから歓声が上がるも、ボールは枠内に入らない。その直後には、本田のFKがバーを直撃。はね返りを拾った宇佐美のシュートもGKの両腕にがっちりと収まった。

「19回、100%得点できるチャンスをつくった」とハリルホジッチ監督が悔しがるほど、一方的に試合を支配していたのは日本だ。監督が口にしたように「1点獲ればすべてが変わった」だろう。だが、怒涛の攻めは、いずれも不発。イラク戦のようなゴールラッシュを期待していた57,533人の観客からは溜息が漏れ、ブーイングが起こった。
 
 積年の課題だった決定力不足が、肝心なW杯予選の初戦で露呈した。シンガポールのシュタンゲ監督は「運があった」と振り返ったが、ハリルホジッチ監督は「運がないではなく、他の要素がある。冷静に分析してトレーニングしていきたい」と答えた。

「やることはすべてやったが成功しなかった」
 指揮官は選手たちを責めず、「次は勝とう」と檄を飛ばした。今後のアジアの戦いでも、対戦相手は徹底して守りを固めてくることが予想される。これをいかに打破し、ロシアへと船を進めるか。就任以来、3戦3勝と順調な船出をみせたハリルジャパンに突如として湧き立った雷雲。振り払うにはゴールを決め切るしかない。