東京都の新規の新型コロナウイルス感染者は6月26日から5日連続で50人を超えた。いわゆる「夜の街」関連が多数を占めているといわれる。

 

 4日連続となった29日の時点で、埼玉県の大野元裕知事は都内での会食や繁華街への外出を控えるよう、県民に自粛を呼び掛けた。埼玉県内の感染者数も増加傾向にあり、知事は「東京都との関係を考えれば憂慮すべき状況にある」と語った。

 

「逆『翔んで埼玉』だな」。ネット上でこんな声を拾った。「翔んで埼玉」とは昨年大ヒットしたコメディータッチのB級映画である。

 

 この映画、漫画作品が基になっているのだが、埼玉県特有の伝染病は「サイタマラリア」。その他にも「ダサイタマ」「クサイタマ」「ウサンクサイタマ」……。これでもかといわんばかりに埼玉県をコケにし続けるのだが、なぜかこれが受けに受けた。確か、県境には関所が設けられており、埼玉県民は通行手形がなければ東京に行けないという設定になっていた。

 

 あれから1年、予期せぬコロナ禍により、ネット上には<むしろ今は、埼玉の方から東京との間に関所を設けるべき時代かもしれん>との書き込みも。

 

 コロナの東京一極集中化で、このところ「脱東京」という言葉をよく見聞きする。リモートワークが浸透した今、わざわざ都内に居を構え、満員電車に揺られながら都心の会社に通勤する必要があるのか、との問いかけだ。

 

 またマイナビが行った就活生向けのアンケート(調査期間3月18日~4月6日、7263人対象)によると、地方の企業に勤めたいと考える学生が47.2%、地方に住みたいと考える学生が54.8%と想定を上回った。これまで見られなかった「脱東京」の動きだ。

 

 そこで1年延期が決まった東京五輪である。1964年の五輪は「首都建設」のため全国から労働者が集められ、今に至る一極集中を招いた。半世紀以上がたち、直下型地震も取り沙汰される中、<英ロイズ保険組合の都市リスク指標で東京は1位の常連>(日本経済新聞6月28日付)なのだという。

 

 都知事選を前に都の貯金箱とも言える財政調整基金がコロナ対策でほぼ底を突く今、五輪が必要なら、なぜ必要なのか。不必要なら、なぜ不必要なのか。後者の候補者は生殺与奪の権を持つIOCとどう交渉するつもりか。残り4日間、議論を深めてもらいたい。

 

<この原稿は20年7月1日付『スポーツニッポン』に掲載されたものです>


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