皆さん、こんにちは。前回のコラムを書いた5月から2カ月が経過しましたが、いかがお過ごしでしたか? 私はこのインターバルがとても長い期間に思え、生活環境がどんどんと変わっていき、新型コロナウイルス感染拡大の影響が目に見えて広がっていくのを実生活やニュースなどを通じて感じとりました。


 6月に入って少しずつですが日常を取り戻しつつありますが、油断は禁物です。さらなる感染拡大を防止するために、そして第二波を引き起こさないためにも今できる予防策を常に意識し、新型コロナウィルスと共存していくくらいの心構えを持って生活しなければいけないと思っています。

 

 前回のコラムでもお伝えしましたが、東京オリンピックは2021年へ延期されました。本来なら開催直前のこの時期は、メディアも五輪一色だったでしょうが、今は連日、コロナウイルス関連のニュースばかりです。個人的な話ですが「コロナ、コロナ」ばかりで正直つまらなく、最近はテレビを見ない生活になっております(笑)。

 

 そんなこともあって、いつもよりも考える時間が増えました。その中で実感したことが、「今までどおり」や「普段どおり」という言葉が全く使えなくなってしまったことです。多くの人はまだまだ警戒心が非常に強いと思いますし、心から物事を楽しめる時間を持つのは当分先のように感じます。

 

 野球界に目を転じれば今年、夏の甲子園が中止となりました。私が仕事で関わっている大学野球も中止や延期となり、関係者は一様に暗い顔をしていました。そんな中、6月19日に先陣を切る形でプロ野球が開幕しました。

 

 約3ヶ月の延期を経ての6月の開幕戦は、いつもとは違う無観客開催。私はテレビの前で正座をしながら、投手が投げる第1球を食い入るような眼差しで見ていました。改めて「自分は野球が心底大好きなんだなぁ」と感じた瞬間でした。

 

 無観客で行われているプロ野球は、選手の一挙手一投足のスゴさが音を通じて感じられます。皆さんも是非それを味わってほしいと思います。ボールがミットに収まる高く乾いた音、そしてバットがボールを芯でとらえたときの快音。私はその音を以前から「サバ缶を力強く一瞬で開けたようなパッカン!という音」と表現しているのですが、これでは凄さが伝わりませんかね(笑)。

 

 とにかく投手が良いボールを投げれば捕手も良い音(キャッチング)で応えてくれ、打者がボールを芯で捕らえられたらバットは快音を響かせ、素晴らしい打球が飛んでいきます。

 

 非常に高い技術が発揮されるからこそ、こうした凄い音を鳴らす事ができるのです。他にも守備においてグローブの芯(ポケット)で捕球する事ができれば、「ポン!」という音が聞こえるはずです。しっかりと芯で捕るからこそ確実な送球や次のプレーに繋がってくるのです。

 

 あとはベンチでの声の大きさも聞いて欲しいですね。このような"野球音"は何万人もいる球場では実感できないものです。ベンチの選手は、グラウンド上にいる選手に届くように声を出し、高い集中力で的確な声掛けを行っています。ベンチの選手は試合に出ているメンバーよりも戦況を把握してるかもしれません。自分の出番を想定しながら刀を研ぎ、いざ出番となれば最初から100%の状態で仕事をする。そういう部分にも注目するのも無観客開催の楽しみでした。

 

 10日から段階的に観客を入れた開催になりますが、超満員になるのはまだまだ先のことです。ぜひこの機会に「音の凄さ=技術の高さ」と覚えていただき、目と耳でプロ野球テレビ観戦を思う存分楽しんでみてはいかがでしょう。では、また次回のコラムでお目にかかりましょう。

 

<小野仁(おの・ひとし)プロフィール>
1976年8月23日、秋田県生まれ。秋田経法大付属(現・明桜)時代から快速左腕として鳴らし、2年生の春と夏は連続して甲子園に出場。94年、高校生ながら野球日本代表に選ばれ日本・キューバ対抗戦に出場すると主軸のパチェーコ、リナレスから連続三振を奪う好投で注目を浴びた。卒業後はドラフト凍結選手として日本石油(現JX-ENEOS)へ進み、アトランタ五輪に出場。97年、ドラフト2位(逆指名)で巨人に入団。ルーキーイヤーに1勝をあげたが、以後、制球難から伸び悩み02年、近鉄へトレード。03年限りで戦力外通告を受けた。プロ通算3勝8敗。引退後は様々な職業を転々とし、17年、白寿生科学研究所に入社。自らの経験を活かし元アスリートのセカンドキャリアサポートや学生の就職活動支援を行っている。


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