(写真:空位となったバンタム級のベルトをかけた闘いは8月10日に行われる ⓒRIZIN FF)
ようやく日本の総合格闘技界が動き始めた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、3大会(4月・横浜、5月・仙台、6月・大阪)の中止を余儀なくされた『RIZIN』が、8月に2大会を開催すると発表したのだ。
8月9日(日)『RIZIN.22~STARTING OVER~』
8月10日(祝)『RIZIN.23~CALLING OVER~』
場所はいずれも横浜みなとみらいにある新設会場「ぴあアリーナMM」。
両大会の対戦カードの一部が昨日(7月9日)発表されたので、まずは紹介しよう。
<8月9日『RIZIN.22』>
▼MMAルール5分×3ラウンド(71キロ契約)
矢地祐介(KRAZY BEE)vs.ホベルト・サトシ・ソウザ(ボンサイ柔術)
▼女子MMAルール5分×3ラウンド(49キロ契約)
浅倉カンナ(パラエストラ松戸)vs.古瀬美月(Y&K MMA ACADEMY)
▼MMAルール5分×3ラウンド(61キロ契約)
井上直樹(セラ・ロンゴ・ファイトチーム柔術)vs.渡部修斗(ストライプル新百合ケ丘)
▼MMAルール5分×3ラウンド(66キロ契約)
関鉄矢(SONIC SQUAD)vs.内村洋次郎(イングラム)
<8月10日『RIZIN.23』>
▼RIZINバンタム級王座決定戦5分×3ラウンド(61キロ契約)
扇久保博正(パラエストラ松戸)vs.朝倉海(トライフォース赤坂)
▼MMAルール5分×3ラウンド(61キロ契約)
元谷友貴(フリー)vs.魚井フルスイング(和術慧舟會HEARTS)
▼MMAルール5分×3ラウンド(59キロ契約)
伊藤盛一郎(リバーサルジム横浜グランドスラム)vs.神龍誠(フリー)
▼MMAルール5分×3ラウンド(66キロ契約)
斎藤裕(パラエストラ小岩)vs.摩嶋一整(毛利道場)
残りの対戦カードは今後、順次発表されていくことになるが、やはり注目すべきは『RIZIN.23』のメインカード、バンタム級タイトルマッチ・扇久保vs.朝倉だろう。
「勝ちに執着する」闘いを
約3カ月半前まで、RIZINバンタム級のベルトはマネル・ケイプ(アンゴラ)の腰に巻かれていた。ところが3月末に、ケイプはUFCと電撃契約。これに伴い空位となった王座を両雄で争うことになったのだ。タイトル挑戦者決定戦を勝ち抜き、4月にケイプと対峙するはずだった扇久保と前王者と1勝1敗の戦績を残す朝倉との闘い。
2人は、対戦カード発表記者会見で次のようにコメントしている。
「まず試合ができることを嬉しく思います。前回の大晦日の試合で(負けたけど)たくさんのことを学んで強くなって帰ってきました。今後のRIZINのためにも絶対に勝たないといけない。そして俺がRIZINを引っ張っていきます」(朝倉)
「元気ですかー! いろいろなことがありましたが、やっと辿り着けました。朝倉選手を倒します。朝倉選手、最高の試合をしましょう!」(扇久保)
大方の予想においては、「朝倉優位」との声が大きい。だが、私は、そうは思わない。
両者の実力は均衡している。どちらが自らのペースに持ち込めるかが勝負のカギを握るだろう。
開始早々に打撃で攻め入ることができれば、朝倉が断然優位になる。しかし、この局面を上手く捌き、グラウンドの展開に持ち込めたならば扇久保が主導権を握ることになろう。
派手な試合でなくてもいいと思う。試合内容よりも勝負優先だ。このカードには、それだけの緊張感が伴う。「魅せる」のではなく「勝ちに執着する」ヒリヒリ感のある闘いを望みたい。
ぴあアリーナMMの収容人数は約1万人。だが、ソーシャル・ディスタンスが求められるいま、その数は半分の5000人とされる。3大会が中止となり、そのうえ今回の『RIZIN』のチケット収益も減少となる。
そのため、イベントを継続させるためのクラウドファンディングも開始されている。多様な工夫も凝らされているので、ぜひ一度『RIZIN』のサイトを覗いてみてはどうだろうか。
近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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