緊急事態宣言に続き、東京アラートも解除された。コロナウイルス感染拡大第2波の恐れもあるが、日常生活が少しずつ以前に戻りつつある。

 そして、プロボクシングの興行も7月12日から無観客ながら再開されることになった。

 

 昨日(6月11日)、日本ボクシングコミッションと日本プロボクシング協会による「新型コロナウイルス対策連絡協議会」がオンラインで行われた。

 ここで主に話し合われたのは、選手の徹底した隔離措置だ。

 

 出場選手には、試合の3週間前と前日に抗体検査が実施される。また前日計量後はホテルに隔離され、外部との接触は大きく制限されるようだ。選手は、窮屈を強いられるが、当分の間は仕方がないだろう。ボクシング界も「新生活様式」に対応せざるを得ない。

 

 興行再開後の主なボクシングイベントは次の通りである。

<7月12日、愛知・刈谷市あいおいホール>

▼中日本新人王予選6試合

 

<7月16日、東京・後楽園ホール>

▼東洋太平洋フェザー級タイトルマッチ

 清水聡(王者/大橋)vs.殿本恭平(挑戦者/勝輝)

▼日本スーパーライト級タイトルマッチ

 井上浩樹(王者/大橋)vs.永田大士(挑戦者/三迫)

 

<7月22日、東京・後楽園ホール>

▼日本スーパーフライ級タイトルマッチ

 中川健太(王者/三迫)vs.ユータ松尾(挑戦者/ワールドS)

 

<7月26日、愛知・刈谷市あいおいホール>

▼日本ライトフライ級王座決定戦

 矢吹正道(1位/緑)vs.佐藤剛(2位/角海老宝石)

 

<8月21日、東京・後楽園ホール>

▼WBO世界フライ級王座決定戦

 ジーメル・マグラモ(1位/フィリピン)vs.中谷潤人(3位/M・T)

 

 これらは、いずれも無観客で開催される予定だ(6月12日時点)。

 

 動画配信の波

 

 その後、徐々に観客を入れる予定のようだが、ソーシャル・ディスタンスが求められる現在、席の間隔をあけるとなれば、収容人数も限られてくる。

 

 たとえば後楽園ホールの客席数は約1500。おそらく入場が許されるのは、その3分の1程度と見られる。そうなれば、満員でも約500人ということになる。

 主催者にとっては頭の痛い話だ。チケット収入が3分の1になってしまうのだから。

 

 テレビ地上波での全国放送でもない限り、放映権料も多くは見込めない。当分の間は、赤字を覚悟してイベントを開くことになろう。

 これはボクシング界に限ったことではない。総合格闘技界、プロレス界も同様の状況にある。

 

 そこで、総合格闘技界、プロレス界の一部団体が新たな動きを見せている。

 インターネットでの有料動画配信を始めたのだ。

 

 夏以降に、無観客規制が解除されたとしても、ソーシャル・ディスタンスを守るのであれば動員数は限られる。そのうえマスク着用、声援も禁止となれば、生観戦を存分に楽しむのは難しい。ならば、画面越しに楽しんで観てもらいたいと考えてのアイディアだ。

 第2波に備えてのものである。

 

 さいたまスーパーアリーナ、横浜アリーナなどの大会場を超満員のファンが埋め尽くす日は、果たして戻ってくるのだろうか。

 闘いは、生で観てこそ、熱さを体感することができる。それでも格闘技観戦の在り方が、これから大きく変わるのかもしれない。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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