ジャパンラグビー・トップリーグ(TL)のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスは元スコットランド代表主将でSHグレイグ・レイドローの加入を発表した。契約は2020年度からの2シーズン。チームには10月から合流予定だ。NTTコミュニケーションズは22日、オンライン入団会見を実施した。

 

「まずはトップ4の壁を破ることが目標。その先にあるリーグ優勝を達成したい」

 そう意気込むレイドローは、4強の壁を破る切り札だ。NTTコミュニケーションズは10-11シーズンからTLに昇格し、TLの最高成績は5位(16-17、18-19シーズン)である。レイドロー獲得に尽力したNTTコミュニケーションズの内山浩文GMはこう説明する。

「我々が目指すのは、スペースを活用し、アタックをし続けるラグビースタイルです。そのスタイルを進化させるために、我々はピッチ上でのゲームマネジメント、局面局面での勝つためのチョイス、強力なリーダーシップ、レフェリーとのコミュニケーションを強化する必要性を感じており、そこに適材適所であるレイドロー選手の獲得を目指しました」

 

 スコットランド史上最多となる39試合でキャプテンとして出場し、通算76キャップを刻んだ経験豊富なSHだ。ピッチ内での影響力は、W杯日本大会で対戦したSH流大(サントリーサンゴリアス)も「レフェリーとコミュニケーションを取り、ジャッジに対するプレッシャーをも掛けていました。チームメイトにもよく声を掛け、うまくチームをまとめていたので素晴らしい選手だと改めて感じた」と語っていた。

 

 NTTコミュニケーションズ側は、チーム強化という枠を越えた影響力にも期待を寄せている。

「レイドローにはプレー面のみならず、オフ・ザ・ピッチでの貢献に期待しています。我々は社員選手が約6割を占めるチーム。彼には強いリーダーシップを発揮し、ピッチ内外でプロフェッショナルな姿勢で周りを引っ張って欲しい。また彼の今までの経験値は企業の経営課題、管理者育成の講習にも使えるのではないかと考えています」(内山GM)

 一方のレイドローも「NTTコミュニケーションズはグローバルな企業。まずはラグビー選手として功績を残した上で、ビジネスの理解を深めていきたい」と口にした。

 

 34歳のベテランは、スコットランドを皮切りにイングランド、フランスと異なるリーグでプレーしてきた。

「自分が大事にしてきたのは、その国の文化、言語を学ぶこと。それがパフォーマンスにも生きてくる」

 昨年秋に日本で開催したW杯で、日本の文化に触れ、好印象を得たという。好きな日本食には豚骨ラーメンを挙げた。

 

「日本のラグビーは急成長を遂げている。トップリーグでのプレーがすごく楽しみです」とレイドロー。日本で現役生活を全うする可能性も示唆した。

「更なる成長をできることを楽しみにしています。2シーズン終わってから引退というのも可能性はある。まずは2年間ベストなコンディションで戦うことに力を注ぎたい」

 

 NTTコミュニケーションズは昨シーズン、南アフリカ代表HOマルコム・マークスとオーストラリア代表SOクリスチャン・リアリーファノを獲得した。マークスは1シーズン限りだったが、今季はレイドローと、オーストラリア代表15キャップのFLリアム・ギルらが新たに加わった。レイドローはギルを「ジャッカルが得意で、強くていいプレーヤー。一緒にプレーすることが楽しみです」と評した。2シーズン続けての大型補強。初の4強、そして22年スタート予定の新リーグへの強い想いを窺わせる。

 

 フランスプロリーグのトップ14・リヨンOUとパートナーシップ契約を結ぶなど、様々なことにチャレンジするNTTコミュニケーションズ。今後もその動向に注目だ。

 

グレイグ・レイドロー プロフィール>

1985年10月12日、イギリス・スコットランド生まれ。エディンバラ(スコットランド)でキャリアをスタートし、グロスター(イングランド)、ASMクレルモン・オーヴェルニュ(フランス)を経て、20年度からNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに入団した。スコットランド代表としては10年11月のニュージーランド戦で初キャップ。通算キャップ数は76。主将として出場した39試合はスコットランド史上最多、通算714得点は同歴代2位の記録。正確なプレースキックと優れたリーダーシップが持ち味。身長176cm、体重80kg。ポジションはスクラムハーフ(SH)。

 

(文/杉浦泰介、写真:©Craig Watson