FIFA女子ワールドカップカナダ大会は日本時間6日、決勝でなでしこジャパン(日本女子代表、FIFAランキング4位)が、米国女子代表(同2位)と対戦した。なでしこは立ち上がりにセットプレーから立て続けに2失点。さらに2点を追加されて0−4とリードを広げられる。反撃したいなでしこは、前半27分にFW大儀見優季が1点を返し、後半7分にも相手のオウンゴールで2点差に詰め寄った。しかし、直後にダメ押し点を決められ、万事休す。米国が4大会ぶり3度目の優勝を決めた。

 序盤に大量失点、4年前の再現ならず(バンクーバー)
日本女子代表 2−5 米国女子代表
【得点】
[日本] 大儀見優季(27分)、オウンゴール(52分)
[米国] カルリ・ロイド(3分、5分、16分)、ローレン・ホリデー(14分)、トービン・ヒース(54分)
 過去30戦して1勝の強敵に、連覇は夢と消えた。
 なでしこは序盤で出鼻をくじかれた。3分、右サイドから米国のCK。素早くグラウンダーのボールを入れられると、高さを警戒していたなでしこは意表を突かれた。ゴール前に顔を出したFWカルリ・ロイドが左足で蹴り込み、瞬く間に先制を許す。

 さらに、その2分後、米国はFKのチャンス。ここでも米国は低く速いボールを選択する。ゴール前でDFジュリー・ジョンストンがつなぎ、そこへ詰めたのは、またもロイド。再びゴールネットが揺れ、0−2とリードを広げられた。

「もうひとつ、立ち上がりで気を引き締めていれば……」と佐々木則夫監督が悔やんだように、主導権を奪われたなでしこは、痛いミスも出る。14分、相手のアーリークロスをDF岩清水梓がヘッドでクリアしようとしたが、うまくヒットせず、ボールが真上に上がる。これをMFローレン・ホリデーに拾われ、ゴールに叩き込まれた。

 さらに16分には、前がかりになったところでボールを失い、ロイドがハーフウェーライン付近からロングシュート。ボールは前に出ていたGK海堀あゆみの頭上を越え、ゴールに吸い込まれた。

 0−4。「早い時間帯での失点は大きかった」とDF有吉佐織が振り返った通り、なでしこは極めて苦しい状況に追い込まれる。それでも、ピッチ上の選手は諦めていなかった。27分、MF宮間あやの縦パスから右サイドでMF川澄奈穂美が仕掛け、前線の大儀見へクロスをあげる。大儀見はこれをキープし、振り向きざまに左足を振り向いた。ボールはゴールネットに突き刺さり、1点を返す。
 
 点を獲るしかないなでしこは、佐々木監督が前半からMF澤穂希、FW菅澤優衣香を次々と投入。徐々に相手陣内に攻め込むシーンを増やして後半に突入する。

 そして7分、左サイドでFKの好機を得ると、宮間のキックに澤が飛び込む。これを防ごうとした相手DFにボールは当たり、そのままゴールへ。オウンゴールで2−4と2点差に迫った。

 だが、直後、なでしこは痛恨の失点を喫す。失点につながったのは、またもセットプレーから。CKがファーサイドに流れたのを折り返され、最後はMFトービン・ヒースに押し込まれた。再び3点差。事実上、これで勝敗は決した。

 なでしこはMF宇津木瑠美のシュートや、途中出場のFW岩渕真奈がドリブル突破をみせるなど、その後も見せ場をつくる。31分には宮間のクロスに菅澤がヘッドで合わせたが、ボールは相手GKの正面を突き、得点には至らない。最後は守りを固めた米国にしのがれ、試合終了のホイッスルを聞いた。

 前回に一歩及ばない準優勝とはいえ、ここまでの道のりは苦しかった。大会前のアルガルベ杯では過去最低の9位。W杯に入ってからもグループリーグはすべて1点差の勝利で、チーム状態は今ひとつだった。そこから徐々に調子を上げての決勝進出は評価されていい。

「この4年間、チャンピオンとしてプレッシャーがあるなか、ファイナルまで来られた。成功だと思う」
 佐々木監督は選手の頑張りを素直に称えた。最後のW杯と位置づけて臨み、決勝のピッチにも立った澤は「皆が持っている力をすべて出し切った。これが自分たちの結果」とスッキリした様子で語った。

 それでも、あと一歩で頂点に立てなかった悔しさは選手たちの胸に残る。大儀見は「チームとしても個人としても力不足。次に向けて、女子サッカーの今後がかかってくる。ここで何かを変えていかないと、女子サッカーが本当の意味で評価されて進化していかない」と課題を口にした。

 指揮官も「次は若い世代も入ってきて、さらにパワーアップすることが大事」と指摘する。今回は4年前の優勝メンバーが23名中、17名残った。来年のリオデジャネイロ五輪、そして4年後のフランスW杯へは世代交代が大きなテーマとなる。

「なでしこはまだまだ続いていく」
 キャプテン宮間の言葉通り、準優勝から、また新たななでしこのストーリーが紡がれていく。