9月に開催される世界バドミントン連盟(BWF)公認のスーパーシリーズ(SS)「第34回ヨネックスオープンジャパン2015」の記者会見が9日、東京・岸記念体育館で行われた。五輪、世界選手権に次ぐ権威を誇るSSにおいて、年間12試合のうちのひとつがヨネックスオープン。その大会で一昨年は女子シングルスで山口茜(勝山高)が、昨年は女子ダブルスで高橋礼華&松友美佐紀組(日本ユニシス)が優勝する快挙を成し遂げた。それに続けとばかりに男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)は「毎年違う種目で日本勢が優勝している。今年は男子シングルスに運が回ってくるんじゃないかと思って、優勝を狙っていきたい」と抱負を語った。会場は東京体育館で9月8日から13日までの6日間行われる。
(写真:「代表合宿でも練習から充実してきている」と好調を窺わせる桃田)


“低姿勢”で、新たな日本人初を目指す

「テクニックでは絶対負けていない」「いずれ追いつける」。世界のトップ選手に対しても、強気なコメントが目立つ桃田だが、コートでは“低姿勢”で挑む。

 世界ジュニアの男子シングルス優勝、男子団体の世界一を決めるトマス杯でも優勝。これまで日本バドミントン界が到達できなかった頂に辿り着いてきた桃田は、今年もその勲章を増やし続けている。4月のシンガポールオープン、6月のインドネシアオープンと2つのSSを制覇。男子シングルスでは日本人初の快挙である。

 1月にインタビューした際には「トップ8に入りたい」と語っていた桃田。BWF世界ランキングは現在、設定した目標を跳び越え、4位まで上昇している。「イメージしていたよりもだいぶ早く、この位置までこれた」と明かす。だがリン・ダン(中国)、リー・チョンウェイ(インドネシア)というスーパースターは徐々にランキングを上げてくることが予想される。桃田も「まだまだ実力的にはすぐ追い抜かれてしまうぐらい。気を抜かないでやっていきたい」と冷静に受け止めている。

 今年の好調の理由を本人は「去年と比べて1試合1試合に対する意欲が増している」という。点数が開いても諦めない。以前はあっさり負けることもあったが、最近は敗れたとしても接戦に持ち込むことも増えてきた。桃田は“我慢”を覚えた。「自分が意識しているのは、長いラリーで追わなくなったり、ラリーが終わった後に気の緩みから連続失点すること」。体力的にきつい時こそ、腰高にならずに、低い姿勢を保つことでコート上での粘り強さを生んでいるのだ。

 リオデジャネイロ五輪の選考レースは既に始まっている。しかし、桃田が見つめるのは足元ではない。「五輪に出場することが目標ではなく、勝つことが目標。ポイントは計算していない」。来月にはSS2勝目をあげたインドネシアの地で、世界選手権を控え、「日本人初のベスト4以上を目指す」と意気込む。昨年は1回戦負け。桃田は「向かっていく。勢いだけは忘れない」と挑戦者の姿勢で臨むつもりだ。

 世界ランク1位ペア、連覇へ挑戦

 唯一、日本勢で連覇がかかるのは高橋&松友の“タカマツ”ペアである。

 5度目の挑戦にして、初めてSSのタイトルを手にしたのが昨年のヨネックスオープン。以降の活躍は目覚ましいものがある。韓国・仁川で行われたアジア競技大会で銀メダルを獲得すると、UAEのドバイでのBWFスーパーシリーズファイナルズを制した。国外開催のSS初制覇を果たし、今年3月のインドオープンをも優勝。SSで計3度の頂点に立った。BWF世界ランキング1位は4月2日付から7月9日現在まで3カ月以上もトップを守っている。
(写真:ペアを組んで9年目の高橋<左>と松友)

 松友は「去年の初優勝までは決勝の壁を越えられなかった。決勝で勝つ壁を越えられたことで優勝できる自信がつきました」と語るように、昨年の1勝はターニングポイントとなったと言える。高橋は「優勝を経験し、1位と2位では全然違うと感じるようになった」と勝つ喜びを知り、「優勝しないと悔しいと思えるようになった」と意識が変わったという。

 宮城の聖ウルスラ学院英知高時代、高橋が高校2年、松友が高校1年の時からペアを組む。2人の武器は「コンビネーション」。前衛で松友が組み立て、後衛で高橋が強打するスタイルが彼女たちの型だ。それを崩されても、勝ちパターンに持っていくことが今後の課題となる。リオでの金メダル獲得を狙う“タカマツ”ペアは、さらなる高みを目指す。

 一昨年、最年少の16歳で女子シングルスを制した山口は「私の転機となった忘れられない大会」と一気にスターダムへとのし上がった。昨年、女子ダブルスを優勝した“タカマツ”ペアも世界1位に上り詰めるきっかけとなった。今年、新たな歴史を塗り替えるのは誰になるのか。

【第34回ヨネックスオープンジャパン2015】
・9月8日(火) 各種目予選   10時〜
・9日(水)   各種目1回戦  10時〜
・10日(木)   各種目2回戦  10時〜
・11日(金)   各種目準々決勝 12時〜
・12日(土)   各種目準決勝  12時〜
・13日(日)   各種目決勝   12時〜
(写真:日本バドミントン協会の公式ソングを歌う和泉美沙希<左>と記念撮影する選手たち)

※会場はすべて東京体育館

(文・写真/杉浦泰介)