今月25日から、世界水泳ロシア・カザン大会が始まる。今大会の競泳日本代表は、個人種目で金メダルを獲得すれば、来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定する。2012年のロンドン五輪で、戦後最多11個のメダルを獲得した日本競泳陣はカザンで勢いを加速させたい。00年シドニー五輪で2種目入賞を果たした萩原智子は現在、日本水泳競技連盟の理事を務める。昨年4月より同連盟に新設されたアスリート委員会委員長の萩原に、二宮清純が競泳界の現状を訊いた。
二宮: 今回の世界水泳には中学3年生の池江璃花子選手が出場します。彼女は、小さい頃から水泳を習っていたそうですね。
萩原: はい。5歳の時には、もう個人メドレーを泳いでいたと聞きました。お母さんが幼児教育の先生をやられているそうで、家には身体を鍛えるために雲梯がある。運動能力が高く、1歳半でもう逆上がりができたみたいですね。

二宮: やはり水泳も早く始めた方がいいのでしょうか?
萩原: 幼少期に手を使うといいらしいんですよね。水泳は小学生の習い事ナンバーワンのスポーツです。水泳経験者が他競技で活躍することも見受けられ、ベーススポーツと言えるでしょう。全身運動ですし、自然と体幹トレーニングにもなるんですよね。

二宮: なるほど。ところで、萩原さんは現在、日本水連の理事を務められています。連盟の中に入ってみて、感じることはありますか?
萩原: 現場の声をすごく酌んでいる印象はありますね。“これをしたい”という意見が出たら、次の月にはもう始まっているスピーディーさがありますね。

二宮: 競泳はかつて選考で揉めた時期もありましたが、シドニー五輪が終わってからは一発選考になりました。
萩原: 千葉すずさんが、シドニー五輪の選考の時に問題提起をしてくれたことで、競泳の選考もかなり変わった。選手としても、白黒がはっきりしているので、あきらめがつきますよね。

二宮: アトランタは0個、シドニーは4個だったメダルが、アテネは8個、北京は5個、ロンドンでは11個を獲得するなど、五輪での躍進は一発選考の成果といっていいでしょう。
萩原: そうですね。この1、2年でジュニアにも一発勝負のスタンスが浸透してきています。リオ、東京五輪に向けたジュニア選手の強化合宿、スーパースイマーズ合宿というのができました。中学生は全国中学校水泳競技大会、高校生はインターハイ、それぞれの大会で標準記録を突破しないと参加できない。五輪の選考会と同じで、1回のレースで結果を出さないといけないんです。池江さんや、日本選手権でも上位に入った今井月さんもその中から出てきました。

二宮: ジュニアの育成にも力を入れていると?
萩原: はい。その他にも柴田亜衣ちゃんを育てた田中孝夫先生や、松田丈志君を育てた久世由美子先生が、今はジュニアを指導してくださっている。そこでは選手だけでなく、指導者への指導も行われているんですよ。次世代もまた強くなりそうな予感がしますね。

<現在発売中の『第三文明』2015年8月号でも、萩原智子さんのインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>