プロ野球で外国人選手が捕手のポジションに入ったのは、2000年のディンゴ以来、20年ぶり。7月4日、ディンゴと同じ中日のアリエル・マルティネスが巨人戦でマスクを被った。

 

 

 ディンゴとは懐かしい。本名デーブ・ニルソン。オーストラリア出身の元メジャーリーガーで、通算105本塁打を記録している。

 

 00年に中日に入団したのは、その年の夏にシドニーで行われたオリンピックにオーストラリア代表として出場するためだった。

 

 日本では持ち前のパワーを発揮することができず、わずか1本塁打に終わった。捕手としての出場は、1試合のみだった。

 

 ちなみにディンゴとはオーストラリア大陸に生息する野生のイヌ科の動物である。

 

 マルティネスはキューバ出身、育成上がりの3年目。身長190センチ、体重95キロの偉丈夫だ。

 

 中日には“キューバの至宝”と呼ばれたオマール・リナレスが過去に在籍していた。そのリナレス、現在は中日の巡回コーチをしており、マルティネスの獲得を球団に進言したという。

 

 これまで外国人捕手が少なかった理由としては「野球観の違い」があげられる。

「捕手のリードに投手が従うのが日本の野球。ところが米国を始め、海外の野球は配球も投手が考える。いわば真逆。日本のように緻密な配球が考えられる捕手が外国人選手には少なかった」(元在京球団バッテリーコーチ)

 

 その面で苦労したのがマリナーズで4シーズン、プレーした城島健司だ。リードに従わない投手もおり、コミュニケーションの問題もあってストレスを溜め込む日々だったという。

 

 とはいえ、日本人最難関のポジションで500試合近く出場したのだから城島は立派である。1年目は2割9分1厘と高打率を記録し、ホームランも18本放っている。

 

 話をマルティネスに戻そう。入団から2年間、2軍で鍛えられ、リードも学んだ24歳は、いわば“メイド・イン・ジャパン”の捕手である。高度な配球を身につけるのはこれからだが、肩も強く、将来性は無限大のように映る。バッティングもパワフルだ。

 

 一方で、こんな話も。

「マスクを脱ぐとわかりますが、彼はものすごいイケメンなんです。ファーストを守らせた方が人気が出るかもしれません」(担当記者)

 

 狭き門より入れ(マタイ伝)――。ぜひ本職の捕手で勝負して欲しい。

 

<この原稿は2020年8月14日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです>

 


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