7月に台風が発生しなかったのは、気象庁が1951年に統計を取り始めて以来、初めてのことだという。

 

 

 もし東京五輪が当初の予定通り7月24日に開幕していたら、関係者は“天の計らい”に感謝していたことだろう。

 

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、1年延期となった東京五輪。さらなる感染拡大により、来年夏の開催も見通せなくなってきた。

 

 IOCの“ご意見番”的存在であるカナダのディック・パウンド委員は「再延期ができないのは明確。2021年開催が東京に残された唯一のチャンス」と語っている。

 

 再延期は、本当にないのか。

 

 筆者のインタビューに森喜朗組織委員会会長は、こう答えた。

「これ以上延ばすとね、物凄い金がかかるんですよ。例えばバスも運転手も何千人と雇って、それをみんな残しておかないといけない。ホテルもそうですよ。他へ貸さないということで。それを今年の分はキャンセルしました、来年また頼みます、それまでは使わないでくださいとか。それ以上のことを言ったら、なお金がかかりますよ。」(スポニチ2020年7月23日付け)

 

 可能性としてゼロではないものの、限りなく低いと見ていいだろう。

 

 別のインタビューで森会長は、「(五輪を)やめたら、今の倍のお金がかかる」とも言っている。

 

 では国民は五輪についてどう考えているのか。共同通信が7月に行った世論調査では、「来年夏開催」が23.9%、「再延期」が36.4%、「中止」が33.7%だった。多くの国民が来年7月の開幕は難しいと考えているようだ。

 

 IOCと日本側が描くベストシナリオは、ワクチンが開発され、簡素化してでも開催にこぎつけることだが、森会長が「神頼み」と言うように、その保証はどこにもない。

 

 ならば最悪のシナリオも考え、“損切り”せざるを得なくなった場合の試算も、そろそろ始めておくべきだろう。最悪の状況下、最善の収拾策を模索するのがリーダーの仕事である。

 

<この原稿は『週刊大衆』2020年8月24日・31日号に掲載されたものです>

 


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