5日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は、大会エンブレムのデザインに盗作疑惑が出ていることを受け、都内で会見を開いた。大会エンブレムをデザインしたアートディレクターの佐野研二郎氏は「大変驚いている。全くの事実無根」と真っ向から否定。組織委も国際商標登録を確認済みで、国際オリンピック委員会(IOC)とともに「問題なし」との認識を示した。大会エンブレムは国内外のデザイナーによる条件付き公募を実施し、104作品の応募の中から審査委員会の審査を経て、選ばれていた。7月24日に発表後は、ベルギーの劇場ロゴやスペインのデザイン事務所の作品に似ているとの指摘を受けている。既にベルギーの劇場側からは使用を停止を求める書簡が届いており、組織委の槇英俊マーケティング局長は「内容はパブリックに開示しない。今後の対応については検討中」と話すにとどまった。
 都庁前で世界に向けて大々的に発表された2020年東京五輪・パラリンピックの大会エンブレム。1週間も経たぬうちに、“盗作騒動”が巻き起こった。

 27日にベルギーのリエージュ劇場のロゴに似ているとSNSなどを通じて、疑惑が表面化した。31日には組織委は「東京2020エンブレムについては、IOCの規定上必要とされる手続きを踏まえ、発表前にIOCと共に国内外における商標調査を経た上で決定したものであり、組織委員会としては問題ないと考えています。IOCも同じ見解と承知しています」と発表し、海外出張中の佐野氏からも「報道されている海外作品についてはまったく知らないものです。制作時に参考にしたことはありません」とのコメントを出していた。

 コンペを勝ち抜いた佐野氏は、4日に海外出張から帰国すると改めて盗作を否定した。会見では組織委の槇マーケティング局長とともに、佐野氏はデザイン作成における経緯を報道陣に説明。「これまでの知識や経験を集大成して考案し仕上げた。私のキャリアの集大成とも言える作品。大いなる情熱をもって、このチャンスに挑み、ブラッシュアップを何度も繰り返した。世界に類のないエンブレムができたと完成時に確信しました」とオリジナリティを強調した。

 ベルギーのロゴについて、佐野氏は「要素は同じものはあるんですが、デザインに対する考え方が全く違うので、正直、全く似ていないと思いました」と酷似しているという点も否定した。会見を受け、東京都の舛添要一知事は「東京都としても組織委員会とともに、このエンブレムをこれからも使い続けることを決定しました」と述べた。組織委の槇マーケティング局長はベルギーの劇場側から届いた書簡の内容について明らかにしなかったが、今回の会見で相手側が納得する可能性は高いとは言えない。今後も対応を練らねばならないだろう。

(文・写真/杉浦泰介)