現地時間7日、水泳の世界選手権15日目がロシア・カザンで行われ、競泳女子200メー平泳ぎ決勝は渡部香生子(JSS立石)が2分21秒15で制し、金メダル獲得した。金藤理絵(Jaked)は6位だった。渡部は来年のリオデジャネイロ五輪代表に内定。男子800メートルフリーリレー決勝はイギリスが優勝。日本は全体10位で予選落ちだったが、上位12カ国までに与えられるリオ五輪出場枠を手にした。メダル獲得が期待された男子200メートル背泳ぎの入江陵介(イトマン東進)は4位、男子200メートル平泳ぎの小関也朱篤(ミキハウス)は5位だった。
 嬉し涙を流した4日後、渡部はまたしてもプールサイドで号泣した。それは日本勢が獲得した記念すべき世界選手権100個目のメダル。そして7個目の金メダルを手にした歓喜の涙だった。

 渡部は200メートル個人メドレーでは、最下位から猛烈な追い上げで2位に入り、銀メダルを獲得。今大会の日本人メダル第1号となった渡部は、100メートル平泳ぎで4位入賞を果たした。表彰台まで、わずか0.01秒の差だったが、後半はベストラップを刻むなど、好調ぶりをうかがわせた。

 200メートル平泳ぎでは、予選をトップで通過すると、準決勝3位で決勝へとこぎつけた。この種目は、今シーズン世界ランキング1位につけるなど、得意としている。昨年も世界短水路選手権、パンパシフィック選手権、アジア競技大会と主要国際大会で負けなし。ゆえに周囲への期待も大きかった。決勝までの時間は「レースのことしか考えらず本当に緊張した」と振り返るほど、プレッシャーも相当なものがあったという。

 迎えた決勝、渡部は3レーン。スタートからレースを引っ張ったのは、5レーンのリッケ・モーラー・ペデルセン(デンマーク)だった。この種目のワールドレコードホルダーであり、前回バルセロナ大会の優勝者だ。ペデルセンは50メートルを32秒15、その後も35秒27、36秒25と刻み、先頭を泳いだ。

 一方の渡部は、入りは32秒69とペデルセンに0秒54差の3番手につけた。折り返し地点となる100メートルのターン前に2番手に浮上したものの、トップとの差は約1秒と開いた。だが、ペデルセンが前半型なのに対し、渡部は後半型。ここからが渡部の真骨頂である。

「昨日の(星)奈津美さんの優勝がすごくいい刺激になり、続きたいと思って死ぬ気で頑張った」。100メートルから150メートルのラップは全体トップの36秒18。ペデルセンとの差を詰めると、最後のターンから加速。失速していくペデルセンを尻目に、ラスト25メートルとなったところで完全に抜き去った。そのままぶっちぎった渡部は2位に1秒以上の差をつけて、フィニッシュ。2分21秒15は自己ベストに0秒25及ばなかったものの、自身初の世界選手権優勝を掴み、水面を叩いて喜んだ。

 これで来夏のリオ行きの切符も手にした。大きな重圧を乗り越えての快挙。中学生で五輪代表入りを果たし、かつて“岩崎恭子の再来”と言われた渡部だが、今は違う。ロンドン、バルセロナで一度も届かなかったファイナルに3種目とも進出。決勝は2位、4位、1位と世界を相手に堂々たる成績だ。この夏、一皮も二皮もむけた18歳。まさに“渡部香生子の到来”。そう感じさせる圧巻のレースぶりだった。

 主な決勝結果は次の通り。

<女子200メートル平泳ぎ・決勝>
1位 渡部香生子(JSS立石) 2分21秒15
2位 マイカ・ローレンス(米国) 2分22秒44
3位 ヴォール・ジェシカ(スペイン) 2分22秒76
3位 リッケ・モーラー・ペデルセン(デンマーク) 2分22秒76
3位 シ・ジンリン(中国) 2分22秒76
6位 金藤理絵(Jaked) 2分23秒19

(文/杉浦泰介)