日本代表は来月にオランダ遠征を行い、9日にカメルーン代表戦、13日にコートジボワール代表と親善試合を行います。新型コロナウイルスの影響で選手選考など難しい面はありますが、ぜひとも頑張ってほしいものです。そして今月は国内でも興味深いニュースがありました。ひとつひとつ見ていきましょう。

 

 19歳のリーダーがいてもいい

 

 日本代表は昨年12月のE-1選手権以来の活動です。今回、Jリーガーの招集は難しいとのことです。海外クラブに所属する選手の中で森保一監督はある程度計算できる選手を呼ぶのではないでしょうか。長い間、集まることができなかったので、代表チームとしての勘を取り戻させることに焦点を当てるのでしょうね。

 

 今季からビジャレアルに移籍したMF久保建英は試合に出場さえすれば、良い動きを見せています。自ら仕掛け、チャンスメイクをしています。代表で起用してもおもしろそうです。短い時間でも自分がすべきことをきちんと表現できている。19歳ですが実力は十分です。彼がリーダー役を担っても僕はいいと思います。多くのことを経験してもらいたいものです。

 

 Jリーグに話を移しましょう。9月27日時点の順位表を見てみると4位の名古屋グランパス(同30点)から9位の浦和レッズまでは勝ち点差がわずかに3。中位が団子状態ですね。全く読めないです。過密日程により選手を入れ替えながら戦うためか、ゲーム展開も読みにくいものが多かったですね。

 

 1カ月前までは不調だった鹿島アントラーズがこの間に7連勝を達成しました。復調の要因はDFラインの裏を取られることが少なったこと。また、前後左右のバランスがうまく取れています。攻撃面は相手に中央を意識させることで、サイド攻撃が機能し出した感がありますね。

 

 それに加え、今季から加入したFWエヴェラウド、MFファン・アラーノがフィットしてきました。鹿島に帰ってきたジーコテクニカルディレクターに、相当何か言われたのでしょう(笑)。特にエヴェラウドは9月27日現在、得点ランキング2位(11点)につけています。チームのサイド攻撃が機能し始めたことで、エヴェラウドもクロスボールにタイミングよく合わせています。自分がサイドに流れるべきか、エリア内に留まるべきかの判断も良くなっている。中盤の選手も足下にボールを出すのか、スペースに出すのか、と選択肢が増えています。選手間のコミュニケーションも取れているようなので、このまま駆け抜けてほしいものです。

 

 玄人ファン好みのプレーを

 

 リーグの運営面でも動きがありそうです。Jリーグは10月30日までにアウェー席を数パーセントではありますが、解禁するとのことです。10月には政府のGoTo事業で東京が解禁になるので、Jリーグも様子を見つつという感じでしょう。移さない、持ち込ませないという姿勢はスポーツ界のリーディング団体として大事です。現在はコロナ禍における過渡期と言っていいでしょう。お互いを尊重しながら慎重になりつつ、アウェーサポーターが喜ぶ姿も見られればと思います。

 

 さて、非常にチャレンジングなニュースがあります。元なでしこジャパンFWの永里優季が男子リーグに移籍しました。新たな所属先は神奈川県2部リーグのはやぶさイレブン。永里は女子の中ではフィジカルに長けた選手です。しかし、男子とのフィジカル勝負は現実的ではない。

 

 入団会見で本人は「ワンタッチゴールなどやり方はたくさんある」と語っていたようです。いかに動き出しで勝負できるかですね。手数をかけるとチャージを受ける可能性が増しますから。動き出しに特化し、ワンタッチゴールが増えれば、玄人ファンは見ていて楽しいのではないでしょうか。

 

 センターバックとしては、こぼれ球に対する鋭い嗅覚を持った選手がいるのは非常に厄介です。クロスボールに対して、ヘディングで僕がクリアーしても、ペナルティースポットあたりやゴールエリアあたりにボールがこぼれることは90分のうちに何本かはあります。そこを“ぽん”と押し込まれたら嫌ですね。2列目や1.5列目あたりから、走り込んできてこぼれ球に鋭く反応されると対応が難しい。かつての武田修宏さんの得点パターンでしょうかね。「なんで、オマエ、そこにいるんだよ!」と言いたくなりますもの(笑)。

 

 センターバックとの駆け引きで一瞬、プルバックの動きで自らの前に1、2メートルのスペースを作り、こぼれ球に備える。永里はボールが来る前の動きに磨きをかければ、ゴールを狙えると思います。こんなにアグレッシブなチャレンジは他にありません。僕も注目させてもらいます!

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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