サッカー日本代表が約10カ月ぶりに活動を再開しました。オランダ遠征を行い、カメルーン代表、コートジボワール代表と対戦しました。結果は1勝1分け。身体能力が高い相手に対し、守備陣は奮闘していたように映りました。さっそく1戦ずつ振り返りましょう。

 

 3バックは評価できるが2シャドーは……

 

 まずはスコアレスドローに終わったカメルーン戦。DF吉田麻也とDF冨安健洋のセンターバックコンビがさらに評価を高めました。イタリア・セリエAで身体能力が高い相手と日頃から対戦している経験があるからでしょう。バタつく場面はなく、90分間落ち着いて対応できていました。日本代表史上最高のセンターバックコンビと言っても過言ではないと思います。

 

 それに加え、ダブルボランチのMF柴崎岳とMF中山雄太の貢献も大きいように思いました。彼らがパスコースに規制をかけ、センターバックがインターセプトなどを狙いやすい状況をうまく作っていた。フィジカルコンタクトで当たり負けする場面は少なかった。特に中山がそつなく仕事ができたことは評価に値しますね。彼はボランチ、センターバック、左サイドバックをこなせて、さらに貴重な左利きなのも高ポイントですね。今後、日本代表にとって面白い存在になるのではないでしょうか。

 

 この試合、森保一監督は後半開始から3-4-2-1をテストしました。3バックには冨安、吉田、DF酒井宏樹が入りました。普段からレベルの高いリーグで戦う3人だけあり、大きな問題点はなかったですね。ピッチ上で特に目を惹いたのは右ウイングバックに入ったMF伊東純也です。彼は、起用さえすればドリブルでチャンスを作れるのは周知の事実。今回、さらに評価を高めたのはいつもより引き気味のポジションでも同じことができた。そして、“危ない”“マズイな”と感じたら、DFラインまでしっかり戻れる。そこが僕にとって好印象でした。低い位置まで戻り、そして攻撃に転じると高い位置でドリブルを仕掛け、チャンスを作れる。伊東は海外で揉まれ、タフさを身に付けたのでしょう。

 

 前線に目を移すと1トップ2シャドーが機能していたとは言い難いですね。このシステムは2シャドーのひとりが1トップを追い越すタイミング、センターバックやボランチからパスを引き出すために落ちるタイミングなど細かな動きや高度な連係が求められます。MF久保建英、MF南野拓実、MF鎌田大地、MF堂安律らシャドータイプの人材は豊富ですが、全体ですり合わせる時間が短いことはネックになるでしょうね。

 

 今遠征の収穫は中山雄太

 

 さて、1対0で勝利したコートジボワール戦に話を移しましょう。システムは4-2-3-1で臨みました。この試合も守備陣の出来は良かったです。柴崎とダブルボランチを形成したMF遠藤航もさすがでした。寄せの速さ、パスコースの限定の仕方など、彼らしさが見られました。カメルーン戦の中山に刺激を受けたのでしょう(笑)。

 

 その中山は左サイドバックに入りました。サイドのスペースのケア、アプローチの速さも問題ない。元々ボランチの選手ですから、同サイドのサイドハーフの動き出しに合わせ、良いタイミングでパスの供給ができていた。彼がいれば、交代カードを使わず3バックに移行できる。また後ろが4枚の場合、右サイドバックの室屋成が攻め上がり、3枚(中山、吉田、冨安)が自陣に残る場面でも守備が安定しますよね。この遠征での最大の発見は中山かなと思います。

 

 最終的に途中出場したDF植田直通のヘディングでのゴールで勝利しましたが、攻撃陣は不発でした。左サイドハーフで先発した久保ですが、やはり彼の適正は右サイドなのかなと。左利きながら右サイドでボールを持ち、内側に切れ込んだり、縦に仕掛けたりというのが彼の得意なパターン。それが左サイドだと少し窮屈そうに見えました。伊東との右サイドの熾烈なポジション争いに注目ですね。来月はパナマ代表、メキシコ代表と試合を行ないます。次こそ、攻撃陣の奮起に期待しましょう。

 

 さて、国内の話題も。ルヴァンカップ決勝戦はFC東京対柏レイソルのカードになりました。リーグで好調なFWマイケル・オルンガ率いる柏が有利かなと個人的に思います。FC東京守備陣はオルンガとMF江坂任のホットラインを遮断できるか。ここが見物ですね。一方のFC東京も強力な助っ人外国人たちが仕掛ける攻撃には迫力があります。楽しみな対戦カードであることは、間違いありません。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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