皆様つい最近までうだるような暑さが続いていた毎日でしたが、ここのところ急に気温が下がり、気温の変化に身体がついていけない白寿生科学研究所の岸川でございます。

 

 今年も早いもので残り3カ月を切りました。私のコラムも8月以来のご無沙汰ですが、皆様は猛暑の夏をどのようにお過ごしになりましたか? 私の場合、7月は毎日のように雨が降り、ほとんど太陽を見た記憶がありませんでしたが、梅雨明けと同時に今度は容赦なく照りつける太陽。毎日35度を超す猛暑で体力を奪われました。

 

 私は今まで打撃投手として働いていた際には、シーズン中のゴールデンウィークやお盆休みなどの長期休暇を経験したことがありません。「今年こそは!」と思っておりましたが、新型コロナウィルスの影響によりステイホーム。家の片付けなどをして過ごしておりました。旅行などの楽しみはまた来年にとっておきます。

 

 さて打撃投手というのはバッティング練習時に投げるだけが仕事ではありません。練習時間以外にも選手個人の練習のパートナーとしてコンビを組んだりします。私が長年にわたって打撃投手を務めた中で、特に思い入れの強い選手が3人います。それは小久保裕紀(元侍ジャパン監督)、高橋由伸(元読売巨人軍監督)、村田修一(現読売巨人軍二軍野手総合コーチ)の3選手です。

 

 皆さんはこの3選手の共通点は何かおわかりになりますか? 年俸が億を超えていたとか、タイトルホルダーである、などではありません。この3人は自分よりも年上の私を個人練習のパートナーとして指名してくれた選手なのです。本来ならこうした個人練習のパートナーは年下に頼むことが普通です。その方が気を遣わずに済み、自分のペースで練習が行える。また色々と頼みやすいなど……が、その理由です。

 

 今回からは数回に分け、この3選手について書いていきたいと思います。まずは、小久保裕紀。ある意味ジャイアンツを変えた男ではないでしょうか。

 

 2003年秋の宮崎キャンプ、衝撃的な一面記事がキャンプ地でも話題になりました。「小久保、無償トレードで巨人へ!」と。当時、小久保選手と言えばダイエー(現ソフトバンク)の中心選手であり、この年は春のオープン戦で右足を負傷しシーズンを棒に振っていました。でもまだ年齢は30代前半。これからも充分に活躍するであろう選手がなぜトレードに? 私も含め、皆がその思いでした。

 

 この年、巨人はシーズン終了後に原辰徳監督が辞任し、後任は堀内恒夫監督になりました。このトレードは堀内監督が秋季キャンプから指揮を執っていた中での出来事でした。

 

 私の記憶が正しければ、東京で記者会見が行われた翌日に、小久保選手は若手選手しかいないキャンプ地・宮崎を訪れ、監督やコーチ、選手。そしてスタッフに挨拶をしました。挨拶をするためだけに宮崎入り!? この行動に私は大変驚きました。

 

 そして年が明け、04年の球春到来! 前回のコラムで書きましたが、私自身も1軍昇格でしたがギックリ腰で出遅れ、2軍の宮崎キャンプに合流しました。清原和博選手を筆頭にベテラン選手を相手に投げていましたので、中々接する機会もなかったのですが、小久保選手はチームが円滑に回るように定期的に裏方と食事会を開き、コミュニケーションをとってくれました。

 

 小久保選手は負傷明けということもあり、ヒザに特殊なサポーターをしながらプレーしていました。だが、ヒザの痛みも癒え、サポーターが外れてからは打撃も完全復活! チームは3位で終わってしまいましたが、シーズン途中から第69代の巨人軍4番に座り、個人成績は打率.314、ホームラン41本打点96。ホームランに関して言えば、歴代の巨人軍の右打者で長嶋茂雄さんも達成できなかった初の40本到達という素晴らしい成績を収めました。

 

 シーズン終了近くになった頃のことです。小久保選手本人から来年のキャンプから私に個人練習に付き合ってもらえないか?と打診がありました。私も快諾し、ここから小久保裕紀という男の野球に取り組む姿勢やキャプテンシーを見ることになるのです。この続きは次回のコラムにて。お楽しみに!
(つづく)

 

<岸川登俊(きしかわ・たかとし)プロフィール>
1970年1月30日、東京都生まれ。安田学園高(東京)から東京ガスを経て、95年、ドラフト6位で千葉ロッテに入団。新人ながら30試合に登板するなどサウスポーのセットアッパーとして期待されるも結果を残せず、中日(98~99年)、オリックス(00~01年)とトレードで渡り歩き、01年オフに戦力外通告を受け、現役を引退した。引退後は打撃投手として巨人に入団。以後、17年まで巨人に在籍し、小久保裕紀、高橋由伸、村田修一、阿部慎之助らの練習パートナーを長く務めた。17年秋、定年退職により退団。18年10月、白寿生科学研究所へ入社し、現職は管理本部総務部人材開拓課所属。プロ野球選手をはじめ多くの元アスリートのセカンドキャリアや体育会系学生の就職活動を支援する。


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