23歳の村上礼華(ダイキアクシス)は東京オリンピック出場を目指すビーチバレープレーヤーだ。2019年から1歳上の坂口佳穂(マイナビ/KBSC)と『CARINO DEA(カリーノデア)』というチームを結成し、日々腕を磨いている。

 

 

 

 

 

 

 9月22日時点、村上の日本ランキング個人順位は11位。東京オリンピック選考のFIVB(国際ビーチバレー連盟)開催国枠ランキングでは坂口とのペアで6番手だが、若い2人だけに伸びしろは充分である。昨年はマイナビジャパンビーチバレーボールツアーファイナルを初制覇し、11月にはFIVBワールドツアー(1star)でも優勝した。“下克上”を虎視眈々と狙うペアだ。

 

<誰よりも強く、可愛く。>をコンセプトとする『CARINO DEA』。2人は18年世界大学選手権大会で初めてペアを組み、翌年から本格的にチームを結成した。

「自分が得意なことは佳穂さんがあまり得意ではなかったり、逆に佳穂さんができることを私はできない。そういう面でも互いに補い合えるペアだと思っています」

 

 先述したように、ペアを組んでからの日は浅い。まだまだ上には上がいる。それでも坂口が2人の強みを「常にチャレンジャー精神でいられるので勢いと元気さ」と挙げたように、このペアはどこかポジティブなオーラを纏っているように映る。追う者の強さと言っていいのかもしれない。

 

 村上の身長は173cm。日本人の平均身長を上回っているものの、ビーチバレー界においては長身の部類に入らない。そんな彼女が武器とするのがサーブである。

「同じ打ち方をして、回転をかけたり、かけなかったり、高さを変えることを意識しています」

 対戦相手に的を絞らせず、レシーブしづらいボールを厳しいコース目掛けて打ち込むのだ。

 

“狙ったところは外さない”とまでは言わないが、村上も「コントロールにも自信はあります」と口にする。ペアを組む坂口も村上の長所を「相手の嫌なところにボールを落とす技術や、サーブのパワーとスピード、コントロール力だと思います」と語っている。

 

 駆け引きの勝負

 

 村上をビーチバレーの世界にスカウトしたのは、松山東雲女子大学・短期大学の福井(旧姓・佐伯)美香監督だ。現役時代はインドアのバレーボールを含め3度のオリンピックに出場。2000年シドニー大会のビーチバレーで4位に入賞した実績を持つ。

 

 女子ビーチバレーの第一人者も村上のサーブ技術を高く評価する。

「スピードがあり、コースも狙える。なおかつ変化をつけられるんです。ドライブをかけたり、無回転サーブと多彩な種類を持っています。私が今、日本のトップでサーブが巧いと感じるのは、ランキング上位の石井(美樹)と村上(めぐみ)。その2人と比べても引けを取らないと思います」

 

 福井監督が名を挙げた石井美樹(荒井商事/湘南ベルマーレ)と、村上めぐみ(オーイング)は日本ランキング1位と2位のトップランカーだ。福井監督によれば、彼女のサーブ力は、大学時代に磨かれていったという。

「村上自身が良いサーブを打つ選手を映像で観たりしながら、すごく研究していました。打ち方もコースもどんどん良くなっていったと思います」

 

 サーブの次に得意なことを「キャッチ」と村上は言う。キャッチとはサーブレシーブのことを指す。サーブは攻めるのも守るのも得意ということだ。キャッチは自分たちの攻撃に向かうための繋ぎのプレー。攻撃の起点とも言えるだろう。正確な技術に加え、相手の狙いや流れを読む力も必要になる。

 

 ビーチバレーは16×8mのコート内で、ネットを挟んで両ペアによる目まぐるしい駆け引きが繰り広げられる。どこに打つか、どこに打たせるか。頭脳の勝負でもある。福井監督は村上の巧さも認めている。

「技術の幅が広い。しなやかさもあり、強打も打てる。随所で相手を見ながら戦える力を持っていると思います」

 

 村上自身は駆け引きについて、「相手の裏をかいた時はすごくうれしい。逆に騙された時はすごく落ち込みます」と、こだわりを見せている。「性格がひねくれているので、得意なのかもしれませんね」と笑うが、勝負事においては必要な資質とも言えるだろう。

 

 彼女がビーチバレーを本格的に始めたのは松山東雲女子大学に入学してからだ。今年で競技転向6年目を迎えるが、元々はインドアのバレーボール選手だった。村上がビーチの世界に飛び込んだきっかけとは――。

 

(第2回につづく)

 

村上礼華(むらかみ・れいか)プロフィール>

1997年1月10日、兵庫県生まれ。ダイキアクシス所属。小学1年からバレーを始める。淡路三原高校入学後、ビーチバレーを経験。高校女子全日本選手権大会で松山東雲女子大学コーチである福井(旧姓・佐伯)美香の目に留まり、同大へ入学した。17年からシニア日本代表入り。U21アジア選手権大会準優勝の好成績を挙げた。18年は全日本大学選手権に優勝し、世界大学選手権大会に出場。ジャパンビーチバレーボールツアー(BVT)で初優勝した。昨年から坂口佳穂(マイナビ)と本格的にペアを組み、BVT2戦で優勝。同ファイナル初制覇を成し遂げた。11月にはFIVBワールドツアー1starイスラエル大会を制した。身長173cm。

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(文/杉浦泰介)

 

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