二宮清純: 生殺与奪の権を持っているのはIOCです。マラソンの(札幌への会場)変更もそうですが、IOCは急にカーブを切る時がある。最近はWHO(世界保健機間)と接近しています。コロナ対策はわかりますが開催の可否に影響を与えることはないのか……。

森喜朗: 急にと言ってもね、暑さ対策は大丈夫かというのに対して、我々もいろんなことをしたけど、それでも本当に大丈夫かと言われると、そりゃ自信ないですよ。やってみなきゃ分からんから。その時突然、気温が低い札幌はどうだと言われたら、乗りますよ。こっちだって。だからすぐに「金は出すんでしょうな」と。いや、原則そっちだと言うから、それを考えてくれるならこの話に乗るって言ったら、そこは聞いておこうというわけで。

 

<この原稿は『スポーツニッポン』2020年7月23日付けに掲載されたものです>

 

二宮: IOCはあまり根回しをしない。再び“寝耳に水”という事態が起きなければいいのですが……。

: いやいや(笑い)。

 

二宮: 来年7月実施か再延期か、中止か。IOCの最終的な決定はいつ頃になりそうですか。

: やっぱり春頃には判断していかないといけないと。

 

二宮: 来年の3月。遠藤さんが言ったような。

: 薬にしたって、これでいけるんじゃないか、というものがないわけじゃない。ただ、国によってちょっと違うから。これはどこかで合意するしかない。

 

二宮: やはり最後はワクチンと。

: 中止したらえらい金になっちゃうし、もう1年延ばすというのはよほどのことじゃないと。五輪をもういっぺんやるぐらいの金がかかるでしょう。

 

二宮: それでは都民、国民の理解は得にくい。

: 要は、簡素化は言うは易し、行うは難しということ。基本的にはIOCが五輪そのものを思い切って、どこまで縮減化していけるか。IOCがやるべきことで、もう9割できてしまっているものを削れとか減らせというのは不可能な話。選手を半分にしろってIOCが決めるなら、思い切って何億という金が節減できる。私は、この機会に五輪とはかくあるべしということを日本が提言しろとみんなに言っている。我々が次(五輪を)やらせてもらったら、このぐらいのことはやるという気持ちで提案をして、検討してほしいと言った方がいいと。

 

二宮: それがレガシーになると。

: 現に、五輪とパラリンピックを一緒にやっていこうというものを残している。IOCも財政のことを強調したり、実際にそういう方向性を見せようとしている。だから、日本からこういう提案があったというのを、世界から共感を得られるように、議論もしていけたらいいなと思っています。それが我々の責任だと思ってます。

 

二宮: コロナ禍を「災い転じて福となす」とするということですね。IOCにも危機感を共有してもらいたい。

: 今回は日本から言って5競技増やしてもらったんだけど、新競技をつくる時はスクラップ&ビルドで、増やすならいくつか減らさないと。その国にはない施設を新しく造ってまでやらなきゃならんのだったら、やらない。そういう意味で五輪を簡素化していくと。主催の国が主体性を持って決められるか、だと思いますね。

 

(おわり)