鎌田大地はやはりトップ下がよく似合う。

 約10カ月ぶりの活動となる日本代表のオランダ遠征第2戦目。アフリカの強豪コートジボワール代表との一戦で1トップを務めた鈴木武蔵の後ろのポジションについた。

 これまでは日本代表の事情で1トップに入ることも少なくなかったが、フランクフルトでもプレーする本来のポジションでチャンスを得た。

 

 序盤こそ動きは硬かったが、時間が経つにつれて本領を発揮していく。

 最大の見せ場は後半13分だった。

 右サイドの伊東純也からパスを呼び込み、足に吸いつかせるような受け方でマーカーを一瞬にして外すとドリブルでペナルティーエリア内に侵入。寄せてきた相手に対してもキックフェイントで動きを止めたうえで、シュートに持ち込んだ。GKの真正面でブロックされたものの、弾かれたボールをもう一度押し込もうとした。ゴールを割ることはできなかったが、才能の片りんを示したシーンでもあった。

 

 鎌田の武器は、高い技術と体の強さで周りを活かせる点にある。

 相手の間に入ってボールを引き出すなど、チャンスメークに注力した。後半17分には瞬時のターンからドリブルして周りを引き付け、左サイドの南野拓実にボールを送り、伊東のシュートにつなげている。同26分にはペナルティーエリア左にドリブルで入って南野に絶好の折り返し。“鎌田発信”による得点の気配が何度もあった。

 

 個人的には終盤、スルーパスを狙ったシーンも好きだ。

 最終ラインからボールを引き出して前を向き、原口元気の動き出しを見て縦に出した。呼吸が合わずにオフサイドになってしまったが、彼らしい“柔らかいプレー”だったと言える。得点に絡むことはできなかったとはいえ、守備でも対人の強さを見せるなど今後の可能性を示した一戦になったと言える。

 

 剛もあり、柔もあり。

 中央に君臨するトップ下は攻撃のタクトをふるい、「王様」とも称される。森保ジャパンは現在このポジションに南野拓実が主に入っているが、視野の広い鎌田をトップ下に置くことで「アタッカー南野」の才をより引き出すことにもなるかもしれない。

 

 今夏、日本に帰国した際に、鎌田に話を聞くチャンスがあった。

「僕って特長と言えるほどの特長がないプレーヤーだと思うんです。足が速いわけでも、めちゃくちゃ点を取るわけでもない。ただ、何でもできる。フランクフルトでは主にトップ下をやっていますけど、走る量は負けないし、守備もやる。そしてゴールにも絡んでいく。ビッグクラブってそういう選手が中盤を任されている。だから自分にも可能性があるんだと思っています」

 

 フォワードではなくミッドフィルダーとして、世界で勝負したいという強い思い。その意味でも日本代表でもトップ下が最も馴染みやすい。

 

 メンタルも非常に強い。

 コロナ禍ではドイツでも中断を強いられ、コンディション調整やメンタルの維持も容易ではなかったはず。それでも彼は「チャンス」と捉えていた。

「欧州のなかでドイツが真っ先に再開することになり、世界中の人々が注目すると思っていたので、そこでいいプレーをしたいなと。走り込みを続けたことでコンディションは非常に良かった」

 

 再開後にブンデスリーガ初ゴールをマークするなど、絶好調ぶりを見せつけた。逆境に強いのもなかなか頼もしい。

 A代表はまだ6試合目。コートジボワールを相手に本来のポジションで示したインパクトは決して小さくはないはず。

 

「トップ下・鎌田大地」は定着するや、否や――。


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