欧州で名の通ったポルトガル人指揮官が、日本への関心を高めている。

 酒井宏樹、長友佑都が在籍するフランス1部マルセイユを指揮するアンドレ・ビラス・ボアス監督である。日本の共同ピーアール社と日本におけるマネジメント契約を結び、先日、日本メディアを対象とした「オンライン メディアラウンドテーブル」を実施。「いつの日か日本に行って仕事ができればいい」と語っている。

 

 まずはビラス・ボアスのキャリアを簡単に振り返っておくことにしよう。

 ジョゼ・モウリーニョをコーチとして支え、ポルト、チェルシー、インテルで右腕となると、2009年にポルトガルに戻り、1部アカデミカの指揮官となる。ここでの活躍によって評価が高まり、32歳の若さでポルトの監督に就任。無敗でのリーグ優勝を成し遂げ、ヨーロッパリーグも制した。その攻撃スタイルは欧州全体で注目を集めるようになり、チェルシー、トッテナムでも指揮を執った。ポルト時代のような輝きを放つことはなかったが、名を落としたわけではない。

 その後ゼニト、上海上港と渡り、昨シーズンにマルセイユの監督に。就任1年目で2位につけ、今季の欧州チャンピオンリーグ(CL)にも出場している(11月3日のポルト戦に敗れ、CL12連敗は大会ワーストタイ)。

 現在43歳とまだまだ若い。欧州のトップシーンに目を向ける一方で、日本に興味を示す理由とは一体、何か。

 

 ビラス・ボアスが語った日本愛――。

 チェルシーのアシスタントコーチ時代に初めて日本を訪れた際、「日本文化に遭遇した経験がとてもエキサイティングだった」という。

「大阪には力強さを感じました。有名なタコ焼きも食べました。観光は大阪だけではなく、東京でも美術館や渋谷のスクランブル交差点にも行ったりしました」

 日本文化に感銘を受けたのは、むしろ「環境」や「人」だという。治安の良さ、マナーの良さ、礼儀正しさ……。彼はこうも語っている。

「日本人の規律や鍛錬ができる姿勢は非常に尊敬します。私は日本文化に強い関心を持っています」

 

 2017年には上海上港の監督としてアジアチャンピオンズリーグで来日。浦和レッズとはグループリーグと準決勝で対戦している。

 印象深い選手として槙野智章、興梠慎三らの名前を挙げるとともに、日本サッカーに対しても好印象を持ったようだ。

「日本のフットボールについていろいろな知識を得ることができた。プロフェッショナルな部分、試合への臨み方、テクニック、スピードには感心させられた」

 

 日本への関心を高めるビラス・ボアスに対して、日本からの〝接触〟もあったようだ。「日本の2つのクラブと話はしたことがありますが、オファーまでには発展していませんでした」と打ち明けている。そして2018年4月に日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が解任された際には日本サッカー協会から連絡を受けたとのこと。候補者をリストアップするための調査レベルのコンタクトではあるものの、「そういう話があったこと自体、光栄だと思っている」と述べた。

 

 無論、すぐに日本で仕事をしたいということではない。

 マルセイユでのチャレンジにおける意欲を口にしており、あくまで「将来的な興味」として、だ。ただ酒井宏、長友を指導し、日本代表の試合もチェックしているポルトガル人指揮官の日本愛が本物だということは「メディアラウンドテーブル」を通じてよく理解できた。

 

 外国人監督がJリーグや日本代表で成功するためには、やはり日本文化に溶け込んでいく姿勢が大切になってくる。

 智将と称されるビラス・ボアスが日本で指揮を執る日は来るのか――。


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