サッカー日本代表(FIFAランキング27位)は13日、パナマ代表(同77位)とオーストリアで親善試合を行い1対0勝利した。後半16分にMF南野拓実(リバプール)がPKを決めた。日本はこの1点を守り抜きパナマに勝利したものの、流れの中から得点を奪うことはできなかった。日本は18日、メキシコ代表(同11位)と親善試合を行う予定。

 

 流れの中から得点奪えず(オーストリア)

日本代表 1-0 パナマ代表

【得点】

[日] 南野拓実(61分)

 

 今回、注目のシステムは「3-4-2-1」でスタートした日本代表。ダブルボランチはMF柴崎岳(レガネス)とMF橋本拳人(ロストフ)、左ウイングバックはMF長友佑都(マルセイユ)、右ウイングバックはMF室屋成(ハノーファー)が務めた。2列目の「シャドー」と呼ばれる位置にはMF三好康児(アントワープ)とMF久保建英(ビジャレアル)が入り、ワントップは南野だった。

 

 前半は両サイドのウイングバックが最終ラインに吸収され、重心が低かった。それに引きずられるように、2列目の三好と久保のポジショニングも低くなり、ワントップの南野が孤立する場面が散見された。唯一、1トップ2シャドーが絡みチャンスを作ったのは31分。DF植田直通(セルクルブルージュ)が前線にグラウンダーのパスを供給。これを南野がスルーし、ペナルティーエリア手前の久保に渡る。久保はダイレクトで三好にラストパス。ペナルティーエリア内で三好が左足を振り抜くが、判定は惜しくもオフサイドだった。

 

 両サイドが最終ラインに吸収され、なかなか攻撃に転じられないとみるや、森保一監督はテコ入れをする。後半から橋本に代え、MF遠藤航(シュツットガルト)をボランチの一角で起用する。これが奏功する。遠藤は「(ワントップの南野)拓実や2シャドーが空いている。そこに縦パスをつれられれば」と考え、ピッチに立った。

 

 遠藤は周囲への指示と自身の巧みな位置取りで両サイドの選手と2シャドーを高い位置に押し出した。配球面では縦パスで攻撃を活性化させた。ウイングバックが高い位置を取れた顕著なシーンは後半9分。南野が右サイドに流れパスを受ける。ペナルティーエリア内右サイドからグラウンダーのパスを入れる。これに反応したのが左ウイングバックの長友である。猛然とゴール前に走り込み左足でシュートを放つが、惜しくもゴール左に逸れた。ウイングバックがようやく攻撃に絡みだし、エリア内に走り込みシュートまで放った。前半では見られない場面だった。

 

 続く14分のシーンは遠藤が攻撃のスイッチを入れた。遠藤がピッチ中央でボールを受ける。相手守備陣の隙を突き、敵陣中央にポジションを取る久保に鋭い縦パスを供給。久保は前を向いてトラップすると、相手DFラインの裏に左足アウトサイドでスルーパスを供給する。このパスに南野が反応するものの、飛び出してきた相手GKにペナルティーエリア内で足をかけられPKを奪取。このPKを南野が難なくゴール中央に蹴り込み、日本が先制した。

 

 日本はこの1点を守り切り、勝利を収めた。バランサーとしてピッチに立った遠藤がいてこその白星。ゲームの流れを変えたいぶし銀のボランチは、この試合を振り返った。

「(前半はスタンドから見ていて)三好と久保のシャドーの選手が下がり気味になっていた。その影響で(ワントップの南野)拓実が前線で孤立していた。自分がピッチに入り、シャドーの選手を前に押し上げて、両ウイングバックがもう少し高い位置に出てプレッシャーをかけることができれば、流れは変わると思い、後半が始まる前に伝えた」

 

 PK奪取につながった自身が供給した久保への縦パスに関しては「タケ(久保)へのパスは、特に難しいことはしていない。相手の位置、味方の位置、自分の位置をしっかり把握していただけ」とさらりと語った。

 

 攻撃の活性化は何も攻撃的カードを切れば功を奏するわけではない。しっかりと交通整理ができる頭脳明晰なボランチひとりで流れはがらりと変わった。しかし、今回のオーストリア遠征での課題は「流れの中からの得点奪取」である。「この展開なら2点目、3点目を奪わなければ」と遠藤。欲を言えば18日に行われるメキシコ代表戦で、その課題を解消してもらいたい。

 

(文/大木雄貴)