今年のプロ野球のドラフト会議は、開幕が約3カ月遅れた影響でシーズン中の10月26日に行われました。大学球界屈指のスラッガーとして注目を集めた近大・佐藤輝明選手は阪神、巨人、福岡ソフトバンク、オリックスの4球団が競合。抽選の結果、阪神が交渉権を得ました。


 話題になったのが巨人・原辰徳監督の「くじ運」です。原監督のドラフト競合での抽選結果は、今回もハズレたことで1勝11敗。交渉権を引き当てたのは2008年の大田泰示選手(東海大相模・現北海道日本ハム)の1回だけです。くじ運の悪さは原監督や球団関係者も知るところのようで、今回のドラフト前には縁起の良いお寺を訪れたといいます。だが、しかし……。

 

 参考までに、原監督のドラフト抽選戦績は以下のとおりです(年はドラフト会議開催年)。

 

◎原辰徳監督のドラフト競合結果とハズレ1位
01年 ×寺原隼人(4球団競合・福岡ダイエー) 真田裕貴
06年 ×堂上直倫(3球団競合・中日) 坂本勇人
07年 ×佐藤由規(5球団競合・東京ヤクルト) 藤村大介
07年 ×大場翔太(6球団競合・福岡ソフトバンク)
07年 ×篠田純平(3球団競合・広島) 村田透
08年 〇大田泰示(2球団競合)
13年 ×石川歩(2球団競合・千葉ロッテ) 小林誠司
18年 ×根尾昂(4球団競合・中日)
18年 ×辰己涼介(4球団競合・東北楽天) 高橋優貴
19年 ×奥川恭伸(3球団競合・東京ヤクルト)
19年 ×宮川哲(2球団競合・埼玉西武) 堀田賢慎
20年 ×佐藤輝明(4球団競合・阪神) 平内龍太

 

 抽選順によってすでに当たりクジの残っていない場合もあり、一概に本人の「引きの悪さ」ばかりが要因とは言えませんが、それにしても見事なハズレっぷりです。

 

 一方、競合抽選の強者として思い出すのが、東北楽天の元球団社長・島田亨さんです。島田さんのクジ運の強さは際立っていました。

 

 05年の高校生ドラフトで報徳学園の長身左腕・片山博視投手を広島との競合の末に引き当てたのを皮切りに、翌06年は4球団が競合した超高校級右腕・田中将大投手の当たりくじを手にしました。さらに翌07年の大学社会人ドラフトでは、大学ナンバーワン左腕の長谷部康平投手を5球団競合の末に交渉権を獲得しています。メディアからは"黄金の右手"と呼ばれたものです。

 

 だが、そんな島田さんにも痛恨の「ハズレ」がありました。07年の高校生ドラフトです。この年、楽天は仙台育英のエース・佐藤由規投手を1位指名しました。これがヤクルト、横浜、中日、巨人との競合になり、島田さんがクジを引きました。結果は……、古田敦也さんがくじを引いたヤクルトに交渉権をさらわれてしまったのです。

 

 島田さんは以前、当サイト編集長・二宮清純のインタビューにこう答えました。
「佐藤投手は地元の選手だからどうしても欲しかったんですが、そのクジの前にヤクルト監督(当時)の古田さんと握手した。あれが良くなかった……」

 

 島田さんは続けます。
「抽選を待っているときに古田さんから『島田さん、よろしくお願いします』と握手を求められた。何も気にしないで『こちらこそ』と応じたら、後日、古田さんがこう言ったんです。『佐藤を当てたくて、島田さんの強運を握手で吸い取ったんですよ』と。あのとき握手さえしなきゃ地元のエースを獲れたのに……。そう思うと、後々まで後悔しましたね(笑)」

 

 さて、最後に原監督に話を戻しましょう。引きが悪い、悪いと言われていますが、06年のドラフトでは堂上選手のハズレ1位で坂本勇人選手を指名しました。周知の通り坂本選手は今季、史上2番目の年少記録で通算2000本安打を達成しました。ドラフトはアマチュア選手にとって運命の分かれ道ではありますが、その後のプロ野球生活を考えれば一里塚です。今年のドラフトでは123人(育成含む)が指名されました。ひとりでも多く、活躍する選手となることを願ってやみません。

 

(文・まとめ/SC編集部・西崎)


◎バックナンバーはこちらから