ビックカメラ高崎BEE QUEENの連覇で幕を閉じた2020年の日本女子ソフトボールリーグ。伊予銀行VERTZは5勝6敗の7位でフィニッシュした。主砲としてチームを牽引したのが入社5年目の樋口菜美だ。全11試合に出場し、打率2割8分6厘、4本塁打を記録。本塁打王とベストナイン(指名打者)のタイトルを獲得し、飛躍の1年となったシーズンを振り返った。

 

 

 

 

――日本リーグでホームラン王とベストナインの2冠に輝きました。

樋口菜美: 目標としていたタイトルを獲れて、素直にうれしいです。ホームラン王、ベストナインのどちらも素晴らしいバッターの方たちが受賞されてきた賞。ここがゴールではありませんが、5年目にして、“やっとここまで来れた”という感じはあります。

 

――今季は前半戦が中止となり、リーグは11試合の実施となりました。4本塁打という数字に関しては?

樋口: 中盤で調子を崩してしまったので、それがなければあと1本いけなかったことはなかったとかもしれませんが、11試合の中で安定して打てたかなと思っています。

 

――最も印象に残った一発は?

樋口: 第7節刈谷大会(9月27日)の日立サンディーバ戦の2ランです。1打席目までは全然良くなかった。ボールの見方が悪く、前の打席から手応えがありませんでした。今季は“これなら打てる”ということが見えてきたので、打席の中でうまく修正することができたんです。これまでだったらダメな日はダメ。そういうことが結構多かったのですが、今季はそれがない。調子が悪い中でも悪いなりのバッティングをできるようになった試合だったと思います。

 

――ホームランに対するこだわりは?

樋口: ホームランは打ちたいです。ひとりひとり役割がある中、自分は長打力が武器だと思うので、そこはしっかり出していきたいと思っています。ただホームランを狙い過ぎるといい結果は出ない。打てている時ほど、打席で強く意識し過ぎてないことの方が多いですね。

 

――打率はリーグ20位タイの2割8分6厘、打点は同12位タイの6でした。

樋口: 今季は1番と4番を主に任されました。どちらかと言えば、先頭打者で打っている場面が多かった。ランナーを置いて打てなかったケースもあったので、もっといい結果は出せたかもしれません。打率を残すことも意識はしていました。自分のスイングができていない試合は少なかったと思っています。100点満点というわけではないですが、1打席1打席を振り返った時、そこに後悔はありません。

 

――今季の躍進の理由は?

樋口: ウエイトトレーニングを意識してやったことと、タイミングを合わせられるように工夫しました。あとは緊張するタイプなので、しないような工夫もしました。

 

――何か意識したことはありますか?

樋口: 特別なことをしないようにしました。例えば試合前にバットを磨いて新品のように綺麗にすること。手袋も試合と練習で使い分けていましたが、それを同じものを使うようにしたんです。いつも見慣れているものを使う。“試合だ”と特別意識をしないように、練習と同じ感覚で臨めるようにしました。

 

――タイミングを合わせられる工夫とは?

樋口: とにかく自分のスイングをできるタイミングを意識することです。ピッチャーに合わせるのではなく、自分の間合いを大事にしました。

 

――打席に入る前のルーティンはありますか?

樋口: ルーティンは特につくっていませんが、私は力むと脇が開くクセがあります。そのためネクストバッターズサークルでは、ユニホームやバッティンググローブを挟んだりして、開かない意識を徹底しています。

 

――例年に比べて変えたことは多いですか?

樋口: ベースの部分はあまり変えていませんが、細かい部分ではいろいろなものを採り入れましたね。

 

――いろいろなことに取り組んだのは、昨季の悔しさがあったからでしょうか?

樋口: それはあります。昨季は結果的に出塁できていても、バットを思い切り振れなかったからボールになり、フォアボールとなった打席がありました。自分の中では出塁したことよりも“あのボールを振れなかった”“自分のバッティングができなかった”という思いの方が強い。そういった意味では後悔の打席が多かったんです。

 

――選手としての理想像は?

樋口: どのピッチャー相手でも打てる波のないバッターです。来季は上位のチームに勝つためにも、外国人ピッチャーからたくさん打ちたいです。

 

――波のない選手となるためには、何が必要だと考えていますか?

樋口: 今は技術ですね。技術がついているからこそ心は保てる。心が強くても技術がなければ結果は出ない。結果が出なければ不安にもなります。まずは技術を上げていくことが大事だと思っています。

 

――今季の伊予銀行は5勝6敗でひとつ負け越しましたが、シーズン終盤まで決勝トーナメント進出の可能性を残すなど、過去最高の7位に入りました。

樋口: 上位チームにあとひとつ、ふたつ勝っていれば、決勝トーナメントへ行けていました。そういう部分では来季に繋がるシーズンになったと思います。

 

――今後に向けての目標は?

樋口: 打率で3割を超えるのが目標です。ホームラン王は来季も獲りたい。そうすれば自然とベストナインもついてくると思います。今年は新型コロナウイルスが感染拡大するなど大変な時期にも関わらず、会社は自分たちの活動に理解を示してくれました。それに結果を出すことで、自分よりも喜んでくださる人がたくさんいるということも感じました。だから、もっとチームの勝利に貢献できるように自分の力を磨いていきたい。会社のサポートがなければ、自分たちは活動できません。その恩返しをしていきたいです。

 

(写真/公益財団法人日本ソフトボール協会)

 

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