(写真:ともに前戦はタイトルマッチで敗れている)

 激動の2020年も師走となった。

 大晦日決戦『RIZIN.26』が目前に迫っている。例年通り遅めではあるが対戦カードが続々と発表されている。

 

 12月2日の記者会見までで、RIZINバンタム級タイトルマッチ/朝倉海(トライフォース赤坂)vs.堀口恭司(アメリカン・トップチーム)、RIZIN女子スーパーアトム級タイトルマッチ/浜崎朱加(AACC)vs.山本美憂(KRAZY BEE)、所英男(リバーサルジム武蔵小杉 所プラス)vs.太田忍(フリー)を含む8試合が決まっていたが、昨日(12月10日)新たに4カードがリリースされた。

 

▼総合格闘技ルール5分3R/ヒジあり(68キロ契約)

朝倉未来(トライフォース赤坂)vs.弥益ドミネーター聡志(team SOS)

▼総合格闘技ルール5分3R/ヒジあり(63キロ契約)

中原太陽(佐山道場)vs.倉本一真(修斗GYM東京)

▼キックボクシングルール3分3R/ヒジあり(50キロ契約)

吉成名高(エイワスポーツジム)vs.ペットマライ・ペットジャルーンウィット(タイ)

▼総合格闘技ルール5分3R/ヒジあり(67キロ契約)

カイル・アグォン(グアム)vs.クレベル・コイケ(ブラジル)

 

 好カードばかりだが、この中で注目すべきはやはり朝倉未来の再起戦か。

 11月21日、大阪城ホール『RIZIN.25』で朝倉は斎藤裕(パラエストラ小岩)に判定で敗れた。それから僅か40日での連続参戦となる。相手の弥益は、元DEEPフェザー級王者でRIZIN初参戦だ。

 

「キラー未来」復活か、それとも…

 

(写真:記者会見で静かに火花を散らした朝倉と弥益)

 記者会見では、弥益が先に口を開いた。

「みんなが目指している舞台に立つ資格が自分にあるとは思っていません。朝倉選手の復帰戦。絶対に落とせない試合、その相手として格闘技を習っているだけの会社員である自分が選ばれた。素晴らしいリスクマネジメントの結果、いま私はここに座らせてもらっています。できる限り頑張りたい」

 

 いきなり自虐的かつ挑発的なコメントを放つ。そして、こう結んだ。

「今回は最上級のオファーをいただきました。私は会社員として働きながら格闘技をやってきたことに誇りを持っています。そこは汚さないようにしたい。早いタイミングで喧嘩に持ち込みKOします」

 

 対して朝倉は、こう話した。

「会社員がどうのとか言ってますけど、俺の方が忙しい中で格闘技をやっていますから。(前回の敗戦の)一番の要因は精神的な部分。知らず知らずのうちに保守的になっていたこと。でも今回は違います。昔に戻って狂気的な朝倉未来を出したい。体力的な配分も考えず1ラウンドで終える闘いをします」

 

 大晦日、「朝倉未来vs.クレベル・コイケ」が組まれるのではないかと私は思っていた。実績的に、クレベルは弥益よりも1ランク上のファイターだ。そのクレベルに勝って「文句ないだろう」と斎藤裕に早期リマッチを迫るのではないかと。

 

 だが、さすがにそれはなかった。

 今回の再起戦、朝倉の勝利は固いと見ている。両者の間に実力差があることは否めない。

 それ故に朝倉は、またしても「絶対に負けられない闘い」を強いられることとなった。

 弥益のイチかバチかの捨て身のファイトは必至だ。「このチャンスを逃してなるものか」とばかりに開始のゴング直後に奇襲を仕掛けよう。いきなりのスリリングな展開が期待できそうだ。

 

「キラー未来」復活か、それとも……。いずれにせよラジカル決着は間違いない。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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