四国アイランドリーグ(今季から四国・九州アイランドリーグ)は昨秋の大学生・社会人ドラフトで三輪正義(香川オリーブガイナーズ−東京ヤクルト)をはじめ、過去最多の6選手をNPB(日本プロ野球組織)に送り出した。
 これで同リーグ出身のNPBプレーヤーは11名。NTT西日本やトヨタ自動車などの9名を上回り、社会人の出身母体としてはNPB最大勢力となった。

 その“真打ち”と呼べるのがメジャーリーグ、ボストン・レッドソックスがマイナー契約で入団を打診している香川オリーブガイナーズのキャッチャー、堂上隼人(25)である。
 堂上は強肩強打を誇るアイランドリーグ・ナンバーワン捕手だ。盗塁阻止のみならず、バッティングも毎シーズン、打率3割を超えるなど安定している。
 レッドソックスのスカウトは「守備力が非常に高い。(メジャー契約を結ぶ)40人ロースターに入れる実力はある」と高く評価している。

 堂上がキャッチャーミットを手にしたのは、高校(武相高)3年になってから。大学(横浜商大)時代には座ったままのスローイングで二盗を試みたランナーを刺し、周囲を驚かせた。鳥谷敬(阪神)、馬原孝浩(福岡ソフトバンク)らとともに、学生日本代表として日米大学野球にも出場している。
 その後、社会人野球の名門・日産自動車を経て、アイランドリーグへ。チームに欠員が出るまで酒屋で配達のバイトをしていたという苦労人だ。

 堂上のプレーを実際に見たNPBのスカウトは口をそろえる。
「モノが違う」
 入団1年目には打率3割2分7厘、11本塁打で2冠を獲得。昨季も打率3割2分2厘、7本塁打、50打点の好成績で香川の連覇に貢献した。

 堂上の入団当時の監督、芦沢真矢(現BCリーグ新潟監督)は“愛弟子”の実力を次のように評価する。
「彼は相手打者をみながら、うまく投手のいいところを引き出してくれる。彼の好リードのおかげで調子が悪い投手が先発しても、ある程度のイニングまで引っ張れるようになりました。独立リーグに何年もいる選手ではない」

 東京ヤクルトの監督時代、練習試合で対戦した古田敦也も「打つほうも守るほうも、力的には1軍レベル」と太鼓判を押していた。
昨秋、アイランドリーグ選抜チームの一員として参加したフェニックスリーグでは、東北楽天の青山浩二と一場靖弘から1試合2本塁打を放っている。これだけ打てて守れるキャッチャーはNPBにもザラにはいない。

 ところがNPBを飛び越してメジャーリーグへ――。
 堂上が目標とするキャッチャーはマリナーズの城島健司。レッドソックスで松坂大輔、岡島秀樹とコンビを組めば、メジャーリーグ史上初の日本人バッテリー誕生となる。

<この原稿は2008年3月23日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

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