松坂は松坂でも、こちらはダイスケではなくケンタだ。
 中日にFA移籍した和田一浩の後釜として西武・渡辺久信監督が最も期待を寄せているのがプロ5年目の松坂健太である。

 昨季終盤に1軍に上がり、3試合に出場した。まだ新人王の有資格者である。
 西武の黄金期を知る黒江透修ヘッドコーチは「若い頃の秋山幸二(現ソフトバンクコーチ)に似ている」と評していた。

 2月26日現在、実戦では25打数9安打で打率3割6分。8戦連続安打中と絶好調だ。そのうちの1試合をキャンプ地の宮崎・南郷で見たが、センターを中心に広角に打ち分けていた。

「ウチの若手はやり甲斐があると思うよ。これだけレギュラーの決まっていないチームは珍しいからね。健太なんて将来のスター候補生だよ」(黒江コーチ)

 パ・リーグが松坂健太ならセ・リーグは広島のルーキー松山竜平だ。九州国際大からドラフト4巡目で入団した。
 昨年夏の大学選手権(東京ドーム)2回戦では早大の“ハンカチ王子”こと斎藤佑樹と対戦し、フェンス直撃の2ベースを放っている。

 このルーキーの実力を誰よりも買っているのが、往年の大投手・江夏豊氏。「地方の大学じゃなかったら、もっと上位で指名されていただろうな。ええセンスしとるよ」と絶賛していた。サウスポーの江夏氏が左打者を褒めるということは相当な素質の持ち主なのだろう。

 西武、広島ともチームの前評判は高くないが、逆にいえば若手にはいくらでもチャンスがあるということである。
 過日、スポーツ紙の巨人の開幕予想スタメンを見ていたら、空いているのはセカンドだけだった。これでモチベーションを維持しろと若手に説教するのはあまりに酷である。報われない努力ほど虚しいものはない。

 試合に出なければ成長しない。給料も上がらないし、FA権も取得できない。野球で身を立てようと思うのなら、弱小球団こそが狙い目である。

<この原稿は2008年3月16日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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