(写真:3度目の決勝で初優勝。喜びに沸く天理大メンバー)

 11日、第57回全国大学ラグビー選手権大会決勝が国立競技場で行われ、天理大学(関西大学Aリーグ)が早稲田大学(関東大学対抗戦A)を55-28で破った。試合は前半に4トライを奪った天理大が、後半も4トライとパワーで圧倒した。天理大は大学選手権初優勝。関西勢の大学日本一は、1984年度の同志社大学以来36年ぶり2校目だ。早大は昨季に続く連覇を逃した。

 

“3度目の正直”で、ついに天理大が大学日本一に輝いた。

 

(写真:キャプテンの松岡を先頭に入場。初の新国立のピッチに立った)

 黒衣軍団は序盤から出足の鋭いタックル、2人目以降の寄せの速さでターンオーバーを連発した。敵陣でプレーを続けた。3分、インゴール中央やや右の目前まで迫ると、SH藤原忍(4年)が右へ展開。CTB市川敬太(4年)がインゴール右サイドに飛び込んだ。SO松永拓朗(4年)がコンバージョンキックを成功し、早々に7点リードを奪った。

 

 FW戦で優位に試合を進める天理大。10分には敵陣にじりじり迫った。最後はLOアシペリ・モアラ(3年)が早大ディフェンスを弾き飛ばし、インゴール中央右に片手でグラウンディング。松永のコンバージョンも決まり、14点にリードを広げた。

 

 20分に1トライ1ゴールを返されたものの、25分に松永のPG、31分には市川のトライで22-7と突き放す。FW戦で陣地を稼ぐ。前半ロスタイムには市川がこの日3本目のトライ。松永がコンバージョンを成功させた。ボール支配率は天理大が6割以上占めたように攻守に圧倒し、前半を29-7で終えた。

 

 後半に入っても天理大の圧力は早大を苦しめた。6分、敵陣深くの相手ボールスクラム。ここで天理大が早大を押し勝った。後退を余儀なくされる早大FW陣。最後はインゴール内にこぼれたボールを、藤原がグラウンディングした。松永が冷静にコンバージョンを決め、36-7。29点差をつけた。

 

(写真:トライこそなかったが天理大のアタックを牽引したフィフィタ<右>)

 1トライ1ゴールを返された後も、天理大は猛攻を仕掛け、早大に流れを譲らない。前半からアタックで存在感を放っていたCTBシオサイア・フィフィタ(4年)が持ち味の突破力を遺憾なく発揮した。18分はオフロードパスで市川の4本目のトライをアシスト。24分には2、3人相手にしながらも前進し、モアラのトライに繋げた。松永の正確なプレースキックも光り、この試合最大の36点差に開いた。

 

 精神的なダメージという意味でも、勝利をほぼ決定付けた2トライ2ゴールだった。その後、早大に2トライ2ゴールを返されたが、55-28でノーサイド。11年度、18年度と関東の強豪校に跳ね返されてきた初優勝をついに掴み取った。3度の決勝全てで指揮を執った小松節夫監督は選手たちをこう称えた。

「今までの決勝2回は実力を出せなかった。“今日は出し切ろう”と送り出した中で、選手たちはハードワークしてくれた。タックルして何回も起き上がり、自分たちの力を出してくれた」

 

(写真:一時は関西Cリーグまで落ちたチームを立て直し、頂点に押し上げた小松監督)

 55得点を挙げたアタック陣に目が奪われがちだが、試合を通してチーム全体の寄せの速さが際立った。「早いプレッシャーで早大さんのいいアタックを前に出てブレッシャーをかけてよく止めていた」と小松監督。キャプテンのFL松岡大和(4年)は「身体を張り続け、全員が我慢した結果の勝利」と胸を張った。4トライを挙げた殊勲の市川も「4つのトライはFW、BKが我慢してくれて全員で獲った」とチーム一丸をアピールした。

 

(文/杉浦泰介、写真/ⓒJRFU